2005/04/17

優季がくれたもの (ToHeart2)(草壁優季)



業務報告~。
読み物広場に、SS「優季がくれたもの」を追加しました。
ToHeart2のヒロイン、草壁優季さんの聖誕祭用のSSです。
やっと出来ましたよ~。
上のリンクからでも下のリンクからでも、お好きなほうから
どうぞなのです~。
上はいつものhtmlで、下ははてな仕様になります。
多分、はてなのほうが読みやすいかと。行間とかの関係で(えー)





優季がくれたもの (ToHeart2)(草壁優季)



「もらってうれしいもの?」
 タマ姉はおかずを選んでいた箸を止めて、俺を見た。
「どういうことなの、タカ坊」
「どう……って、参考までに聞かせてほしいんだ。女の子が
もらってうれしいものって何だろうと思って」
 俺は冷静を装いながら答えた。内心ではかなりドキドキ
していて、さっきから弁当のおかずが全然減っていかない。
 ぼんやりしていると、一緒に食べているこのみと雄二に
おかずを取られてしまいかねないが、すでに事態は一刻の
猶予もないほどに差し迫っていた。
 ゆえに、俺はやむを得ずタマ姉に相談を持ちかけたのだった。
 ……のだが。
「そうね~私だったら、タカ坊の、は・じ・め・て(はぁと)
なんかがいいかしら♪」
 …………。
 そりゃ、タマ姉のほしいものだろ。つか、『は・じ・め・て
��はぁと)』っていったい何だよ?
「このみはね~、え~と、そのハンバーグ~♪」
 と言いつつ、このみは俺の弁当箱からハンバーグを
かっさらっていく。
「俺ならやっぱり、お……」
「お・ん・な、とか言うんじゃないでしょうね、雄二?」
 タマ姉のツッコミに、雄二の動きは固まった。図星だったの
だろう。
「……じゃなくて、やっぱりメイ…」
「まさか、メイドロボ、なんて言わないわよね?」
 タマ姉の笑顔が雄二にはどのように見えたのだろうか。
 再び雄二の動きは固まった。
 またしても図星か、わかりやすい奴。
 動きの止まった雄二の弁当は、その後このみによって攻略された。



 そんなことをしていると、予鈴が聞こえてきた。
 ああ、なんだか無駄に時間ばかりが過ぎていく……。
 俺は落胆のため息をそっとつくと、弁当箱を片付け始めた。
「タカ坊、時間がないからひとつだけアドバイスね」
 片づけをしながらタマ姉が言う。
「『欲しいもの』と『もらってうれしいもの』は、必ずしも一緒
じゃないってことを覚えておきなさい。それと、女の子は好きな
男の子からもらうプレゼントは何だってうれしいものなの。それが
自分のことを想ってのプレゼントならなおさらね。タカ坊なら、
きっと大丈夫よ」
 そう言って笑ったタマ姉の笑顔は、とてもやさしく感じた。



 タマ姉のアドバイスでちょっとだけ自信が持てたけど、残念
ながら時間は止まったりゆっくりになってくれるわけでもなく、
あっという間に放課後になってしまった。
 あ~、とにかく行動開始だ。
 幸いにも掃除当番ではなかったので、廊下で彼女が出てくるのを
待つことにした。
 しばらく待っていると、掃除が終えたらしいクラスメイトが
次々と教室から出てくる。が、彼女はまだ出てこない。
「あれ、河野くん。どうしたんですか、こんなところで」
 クラス委員長の小牧愛佳が声をかけてきた。
「小牧さんは……ゴミ捨て?」
 委員長はゴミがいっぱい詰まったゴミ箱を抱えていた。
「そうなんですよぉ~」
 それほど重くはないのだろうけど、ゴミ自体の量がゴミ箱の
積載量を遥かに超えていて視界も悪そうだ。
 こんなのを無事に持っていけるのかな。委員長だから余計に
心配だ。
「手伝おうか」
「えっ、あ…、その大丈夫ですよ?」
「でも、なんか危なっかしいし」
「や、や、だいじょぶですから~~」
 俺の申し出をやんわりと断ると、委員長はゴミ箱を抱えて
よろよろと歩いていった。
 ……やっぱり危なっかしい。
 追いかけて無理にでも手伝おうと思っていると、通りがかった
クラスメイトの女子が委員長に話しかけた。
 委員長は俺の時と同じく手伝いを断っているようにみえたが、
その女子は強引に委員長のゴミ捨てを手伝っていた。
 ま、委員長だしな。
『委員長だし』
 うちのクラスだけに通じる合言葉だった。
 誰だってほっとけないようなところがあるんだよな。
 さすが委員長。



「やさしいんですね、貴明さん」
 突然背後から話しかけられた俺が驚いて振り向くと、そこには
草壁さんが立っていた。
「く、草壁さん。……いつからそこに?」
「そうですね……『手伝おうか』の辺りからでしょうか。貴明さんは
教室から出てきた私には目もくれず、小牧さんの方ばかり見てました」
 う、それはほとんど見られてたってことじゃないか。
 それに、草壁さんは頬をふくらませていて、なんだか怒ってるっ
ぽい。
「あの、もしかして怒ってたりする?」
 草壁さんに聞いてみると、
「怒ってないですっ」
 ぷいっ、と頬をふくらませた『ぷんすか』状態のまま、そっぽを
向いてしまった。
 ……絶対怒ってるし。それに、なんだか悪いのは俺みたいだし。
 『ぷんすか』な草壁さんも可愛いけど、やっぱり機嫌を直して
もらわないと。
 ここは、あの作戦で行くか。
「あ~、えっと、今日はいい天気で春にしては暑いよね~?」
「そうですね、いいお天気です」
 あからさまな話題転換だけど、草壁さんは返事をしてくれた。
 随分そっけないけど。
「何か飲み物でも飲もうか。俺、おごるからさ」
「…………わかりました」
 第一段階はなんとかクリアしたのだった。



 俺は草壁さんを伴って、自動販売機の前までやってきた。
 ちゃりん、とコインを投入口に入れて、草壁さんに尋ねる。
「何にしようか?」
「えっと……ホットの紅茶がいいな」
 …ホット?
 今日は春にしては暑いぐらいの陽気なんだけど、いいのかな。
「ホットの紅茶でいいんだよね? アイスじゃなくて」
「はい。ホットでお願いします」
 俺がホットの紅茶のボタンを押すと、がちゃこん、と紅茶が出てきた。
 出てきた紅茶の缶は、当たり前のことだが熱かった。
「はい。熱いから気をつけてね」
「ありがとうございます。貴明さん」
 うれしそうに紅茶を受け取る草壁さん。
 俺も自分用にアイスの紅茶を買って、中庭まで移動した。
 中庭のベンチは、さわやかな風が吹き抜ける絶好のポイントなのだ。
 俺はベンチに腰掛けると、プルタブを開けて紅茶をコクリと一口。
 ……うん、冷たくてうまい。
 ちらっと横を見ると、草壁さんはベンチには座ったものの、紅茶を
飲もうとはしない。
 缶を両手で持って、ころころと回している。
 しばらくそうしていた草壁さんは、やがてぽつりぽつりと話し出した。
「やっぱりやさしいです。貴明さん」
 えっ?
「私が勝手に小牧さんに嫉妬してふくれているだけなのに、貴明さんは
いつもと同じように私にやさしくしてくれます」
 それは、草壁さんに機嫌を直してほしかったから。
「違うよ」
「えっ」
 俺はやさしくなんかないんだ。
「草壁さんが怒るのは当然だと思う。委員長に気を取られていたとは
いえ、草壁さんに気づかなかったのは俺のせいだよ。だから、ごめん」
 俺は草壁さんにぺこりと頭を下げた。
「そんなこと……ダメ、ダメですよ貴明さん。男の人が簡単に頭なんて
下げちゃいけません」
 俺の行為にあわてる草壁さん。
 なんかタマ姉あたりが言いそうなセリフだけど、草壁さんが言っても
あまり変な感じはしないなあ。
 しかし、男が頭を下げるのはそんなにおかしなことなんだろうか。
「もう許しますから、頭を上げてください、貴明さん……」
 草壁さんがそう言ってくれたので頭を上げると、草壁さんは涙を
流していた。
 えっ、ええっ?
 今度は俺があわてる番だった。



「ひどいです貴明さん。私だって本気で怒ってるわけじゃないのに、
それなのにそんなことされたら困っちゃいます」
 草壁さんは泣き続けている。
「ごめん」
 なんかさっきから俺、謝ってばかりだ。
「謝るよりも……行動で示して欲しいです」
 俺は、草壁さんの肩をそっとつかんで、キスをした。
「これで、いい?」
「ダメです。もっといっぱいお願いします」
「わかりました。お姫様」
 俺はもう一度草壁さんにキスをした。
 今度はさっきよりも時間をかけて。その分、俺の気持ちが草壁さんに
伝わるように。



 何分経っただろうか。10分ってことはないだろうけど、とにかく
そんなに長く思えるぐらいの間、俺は草壁さんにキスをし続けた。
「やっぱり、貴明さんやさしいです」
 にっこりと草壁さんが微笑む。
 その笑顔を見られるなら、俺は何だってできると思った。
 草壁さんは傍らに置いてあった紅茶を手に取ると、プルタブを開けて
コクリと一口。
「ぬるくなっちゃいましたね、ふふ」
「あ、新しいの買ってこようか」
 俺がそう言うと、草壁さんはふるふると首を横に振った。
「大丈夫です。紅茶よりもあったかいものを貴明さんは私にくれました。
だから平気です」
 にこー。
 いや、そんな恥ずかしいこと言われても。
 俺は何もあげてない……って、忘れてた!
「草壁さん、今日誕生日だよね?」
「えっ……そうですけど」
「ごめん、俺プレゼント何も用意できてない……」
 帰る途中でプレゼント買おうと思ってたのに、完全に予定が……
どうしよう。
「あのですね、貴明さん」
 草壁さんは、そっと俺の手を掴んだ。
「昔、貴明さんはとっても大事なものを私にくれました。そして
今日も……。だから私、すっごく幸せです。これ以上何かして
もらったら罰が当たっちゃいます」
「だけど……」
「逆に私が貴明さんにあげちゃいたいぐらいです」
「えっ……な、何を?」
「……えっちなこと考えてませんか」
「そ、そんなこと……ないよ」
「ふふっ。えっとですね、私の名前、もらってくれますか?」
「えっ」
「『優季』って、呼んでください」
「優季?」
「はい、貴明さん」
「草壁さん?」
「違いますよ」
「優季」
「はい♪」
「優季」
「はい、貴明さん」
「ありがたくもらっておくよ」
「はい。大切にしてくださいね」
「うん。一生の宝物にするよ」
 俺がそう答えると、草壁さんは……優季は、今日1番の笑顔をくれた。



























おわり♪


















あとがき



PS2ゲーム「ToHeart2」のSSです。
��月14日は草壁優季さんの誕生日ということなので、書いてみました。
ちょっと遅れちゃいましたけど。
ゲーム本編では貴明は草壁さんのことを1度も名前で呼んでない……
はずなので、こういう展開にしてみました。
それでは、また次の作品で。



��005年4月17日 草壁優季さんのお誕生日から3日後~



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