2005/05/02

おかえりなさいませ (ToHeart2)(小牧愛佳)



業務報告~。
読み物広場に、SS「おかえりなさいませ」を追加しました。
ToHeart2のヒロイン、小牧愛佳さんの聖誕祭用のSSです。
��日遅れましたが、出来ましたよ~。
なんやかんやで、あの全員キャラ出したるーこSSと同じぐらいの
長さに。
上のリンクからでも下のリンクからでも、お好きなほうから
どうぞなのです~。
上はいつものhtmlで、下ははてな仕様になります。
多分、はてなのほうが読みやすいはず。行間とかの関係で(えー)





おかえりなさいませ(ToHeart2)(小牧愛佳)



「こーのたかあきっ!」
 いつものように廊下側から書庫に入ろうとしたら、突然呼び止められた。
「……何か用?」
 俺を呼び止めたのは由真だった。
 何の因果か、それともタイミングの悪さか、はたまた『るー』の導きか。
出会った当初から彼女とは何かと相性がよくない。
 ほんとに偶然の連続だったのに由真にはそれが信じられず、以来彼女は
俺を目の敵にするようになったのだ。
 だが、俺と愛佳が仲良くなるにつれて次第に由真が絡んでくることも少なく
なっていたはずなんだけど。
「用があるから呼び止めたに決まってるでしょ?」
 びしっと俺に指差す由真。俺、何かしたんだろうか。
「まさかあんた、忘れてやいないでしょうね」
「忘れてる? ……えっと、何か約束してたっけ」
 これっぽっちも記憶にないので、俺は首を傾げるしかなかった。
「してないわよ」
 ずるっ。
 思わず心の中でズっこけた。
「…………」
「な、何よその目は」
 じとーっと見つめる俺にうろたえる由真。
「よくわからんが、早いトコ用件を言ってくれ。俺は忙しいんだ」
 実はそんなことはないんだが、なかなか用件を切り出さない由真にうんざり
してきていたのも事実だった。
「誕生日……覚えてる?」
「誕生日?」
「そ」
「ええっと……聞いた事あったっけ?」
 由真の誕生日がいつなのかなんて、俺には全然聞いた記憶がないのだが。
「あるわよ! 去年教えたでしょ?」
 俺の言葉を聞いた途端、猛然と怒り出す由真。
 つか、怒られても聞いてないもんは聞いてないぞ。
「絶対教えたわよ。5月1日が愛佳の誕生日だって!」
 ……はぁっ?
「愛佳の誕生日?」
「そ。まさかいくらあんたでも忘れてないと思ってたんだけど、どうやら心配が
的中したようね」
 自慢げに頷いている由真だった……ってちょっと待て。
「由真の誕生日のことじゃないのか?」
 確認のために聞いてみると、
「なんであたしの誕生日なのよ。愛佳の誕生日に決まってるでしょ」
 という答えが返ってきた。当然じゃないの、といった表情だ。
 俺はやれやれとためいきをついた後、書庫へのドアを開ける。
「ちょ、ちょっとまだ話は終わってないわよ」
「いや、終わってる。愛佳の誕生日ならちゃんと覚えてるよ。用件はそれだけ
だろ? さっきのはまぎらわしい言い方をした由真が悪いってことで」
 そ。主語を言わない由真が悪い。俺が勘違いをしたのもそのせいだ。
 ……で、いいはずだよな?
 俺は有無を言わせぬ勢いで由真に言うと、書庫のドアを閉めた。
「……そ、それで勝ったと思うなよぉ~~……」
 いつものセリフをドア越しに聞いてから、俺は愛佳の元へと歩いていった。
「あ、たかあきくん。……今、由真の声がしませんでしたか?」
「いや、気のせいだろ」



 翌日の朝。
 由真に愛佳の誕生日のことを指摘されて、あらためて考えてみると。
 プレゼント、何にしよう……。
 去年はケープを贈って、喜んでもらえたのが嬉しかった。愛佳の1番欲しい
ものじゃなかったのは残念だけど、それでもあれは俺にとっても嬉しかった。
「何がいいかなあ…」
「ん? どうかしたのか貴明」
 隣を歩いていた雄二が振り向く。俺の呟きが聞こえたみたいだ。
「ああ、人に喜んでもらえるプレゼントってどんなものかなあと思って」
「プレゼント……委員ちょに?」
「な、なんでわかるんだよ?」
 動揺する俺を見ておもしろそうに笑う雄二。
「だってよ、貴明がプレゼントする相手っていったら委員ちょしかいないだろ。
このみや姉貴にプレゼントするとも思えないし」
 そんなことない、俺だってプレゼントのひとつやふたつ……。
「まあ贈る相手が何人いるかはどうでもよくてさ、今回は委員ちょなわけだろ?」
「そうだけどさ」
「委員ちょにプレゼントねえ~、アクセサリーとかは?」
「それは考えたけど、愛佳にはそういうのは似合わないような気がして」
 愛佳はお化粧とか似合わない……言い方がひどいような気がするけど、
彼女の雰囲気に合ってないような気がする。
 何より、そんなことしなくても愛佳は十分に可愛いし。って、本人の前では
恥ずかしくて絶対に言えないけど。
「それじゃあ服とかがいいんじゃないか? 別にブランド物贈れなんて言わねー
けど、無難な選択だと思うぜ」
「服かあ……」
 去年贈ったケープは、あれも一種の服だろうけど確かに喜んでくれたなあ。
「でもどんな服がいいんだろうな、俺そういうのよくわかんないんだけど」
 このみには聞きづらいし、タマ姉に聞くとおもしろがっていろいろ大変なことに
なりそうだし、そう思って俺は雄二に聞いてみることにした。
「そうだな……。委員ちょに似合いそうな服は」
「服は?」
「ズバリ、メイド服だ!」
 …………。
「お、おい貴明! 回れ右して歩いていこうとするなよ」
「いや、雄二に聞いた俺がバカだったと思ってな」
 やはり雄二に聞いたのは間違いだったか。
「まあ聞けよ。去年の学園祭、覚えてるか?」
 去年の学園祭。うちのクラスは誰が提案したのかメイド喫茶を出すことになり、
その時も委員長の愛佳がひとりで苦労を背負い込んでいて、俺も愛佳のために
出来る限りの手伝いをした、今となってはいい想い出の1ページだ。
「その時な、女子の皆はメイドさんの格好だったろ?」
「ああ、みんなウェイトレスを交代でやってたからな」
 女子から反対意見が出るかと思いきや、意外にも「可愛い服が着れて嬉しい」と
いう意見が多かったように思う。
 そのため、うちのクラスの模擬店は大繁盛のうちに幕を閉じたのだった。
「実はな、その時委員長が女子のみんなをまとめてたらしいぜ」
「え、そうなの?」
「ああ、考えてもみろよ。いくらなんでもみんながみんなメイド服着たいと思うか?
答えはノーだ。恥ずかしいからって反対する女子だっていただろう。そんな女子
連中をまとめてた委員長。これから導き出される答えは、ひとつしかないぞ」
 なんだろう。俺にはさっぱりわからんが、雄二は自信たっぷりの表情をしている。
「それはな、委員長が1番メイド服を着たかったってことに他ならないんだよ!」
「……ほんとかよ?」
「ああ、間違いないね。それに、メイド服は機能的であらゆる作業に向いてるし、
そういうところも考慮してるんじゃないのか、委員長だし」
 『委員長だし』。
 そう言われると、荒唐無稽な雄二の言葉も一理あるように思えてくるから不思議だ。
「それに、おまえら図書室でいろいろ作業してるだろ? 制服を汚さない代わりに
メイド服って選択肢もありなんじゃないか」



 なんだか雄二にうまく丸め込まれたような気がするが、他にいい案が思い浮かば
なかった俺は雄二の提案に乗ることにした。
 なんでも、学園祭の時に確保したツテがあるらしく、格安でメイド服を仕入れることが
できるらしい。そういや、仕入れ係は雄二だったっけ。
 ちなみにサイズも学園祭の時の記録を密かに所持しているとか、ってオイ。
「いや、あくまでデータとして持ってるだけだって。姉貴に誓って、悪用はしてないと
言えるね」
 威張っていうことじゃないだろ……。
「まあ、あれから半年も経ってるからサイズが変わってることもありえるが、そのへんは
多少寸法に余裕を見ておけば大丈夫だろ。貴明は大船に乗ったつもりで安心して
待ってりゃいいから」
 そう言い残して雄二は帰っていった。
 ほんとに大丈夫なんだろうか……。



 その日の放課後。
 いつものように書庫で愛佳の手伝いをしている時に、誕生日の予定を聞いてみることに
した。
「あ、あのさ愛佳」
「は、はい?」
 あー、誕生日の予定が空いてるかどうか聞くだけなのに、緊張してるぞ俺。
「えっと……今度の日曜日って何か予定ある?」
 今度の日曜日が愛佳の誕生日、5月1日だ。
「今度の日曜日というと……あ、その日はちょっと、マズイかも」
 えっ?
「実は、郁乃が補習で、その付き添いをしないといけないの」
「補習?」
「うん。あの子、今まであまり学園に通ったことがなかったけど、勉強だけは遅れ
ないように頑張ってたの。だから勉強のほうは出来ないわけじゃないんだけど、
ほとんどが独学のようなものだから」
「基礎がしっかり出来てないってこと?」
「そんな感じかな。だから自分から補習授業をお願いしたの」
 へぇ~、あの郁乃がねえ。外見はともかく、性格からは想像もつかないな。
「あ、これあたしが言ってたってこと、郁乃に言ったらダメだからね。また余計なこと
言って~って怒られちゃう」
 そう言って愛佳は人差し指を口に当てて、し~っのポーズ。愛佳可愛すぎ。
「ああ、了解。でも、なんで愛佳が付き添わなきゃならないんだ?
 俺がそう尋ねると、愛佳はにっこりと微笑んで胸を張ってこう言った。
「だって、あたしはお姉ちゃんなんですよ?」
 その笑顔は本当にお姉ちゃんの笑顔で、愛佳が郁乃のことをどれだけ大事に
思っているかが手に取るようによくわかった。
「じゃあさ、郁乃が補習の間は愛佳は何をしてるんだ?」
「う~ん、せっかくだし書庫の仕事でもしようかと思ってるんだけど。ただ待ってる
だけってのももったいないし」
 なるほど。ってことは、愛佳はひとりで書庫にいる、と。
 予想外の展開だが、これはこれで俺にとっては都合がいい。
「じゃあ、日曜は俺も休日出勤するかな」
「えっ?」
「たまには日曜日に登校するってのもおもしろいだろ?」
「たかあきくん……いいの?」
 以前なら何よりも先に遠慮していた愛佳。だが最近はそうでもなく、人の厚意を
素直に受け入れてくれるようになってきた。
 俺も遠慮されるよりも甘えてくれるほうが嬉しいし。
「ああ、俺がそうしたいって思ってるんだからな。愛佳がイヤって言っても俺は
やめないよ?」
 かあ~っ
 なぜか愛佳は顔を赤くする。
「たかあきくん、なんかえっちだよぉ……。でも、たかあきくんになら……」
 こらこら、何を想像してるんだか、このお嬢さんは。
 というわけで、5月1日は愛佳と(郁乃はオマケ)学園で会うことになった。



 5月1日、日曜日。愛佳の誕生日。
 天気は申し分ないぐらいの快晴で、風はさわやか。
 思わずどこかへ出かけたくなるような陽気だが、愛佳と一緒に過ごす時間に
比べたら、場所はどこだっていいんだ。
 雄二から朝一番にプレゼントを受け取って、学園へ向かう。
 雄二が始終ニヤニヤしていたのが気になるが、愛佳との待ち合わせに遅れるわけ
にはいかない。
 待ち合わせは校門前。なんとか時間通りに到着すると、すでに愛佳と郁乃は来ていた。
「あ、おはようございます、たかあきくん」
「おそいわよ、この甲斐性なし」
 俺に気づいた愛佳と郁乃が挨拶をしてくれた。いや、郁乃のは挨拶とはいえない
んだけど。
「おはよう愛佳。郁乃も。久しぶりだな」
 俺は郁乃の頭に手を乗せ、ぐりぐりと撫で回す。
「ちょっ、こらっやめなさいよ。レディに対して失礼でしょ」
 俺の手を振り払って愛佳の後ろに隠れる郁乃。
「郁乃、レディならそんな口の利き方はダメでしょ。たかあきくんも。郁乃が喜ぶような
ことしちゃダメなんだから~」
 愛佳がお姉ちゃんぶって郁乃と俺に諭す。
 郁乃は「喜んでなんかないっ」と愛佳に噛み付いているが、顔が真っ赤になっている
ので本当はどう思っているのか微妙なところだった。



 郁乃を補習授業に送り届けてから、俺と愛佳は図書室へ。
 当たり前だが、今日は休みなので図書室には誰もいない。
 グラウンドからは部活をしている運動部の声が聞こえたりするが、校舎の中は静かな
ものだ。郁乃が補習授業を受けているクラスからは離れているから、図書室の周りは
静寂が保たれている。
 いつも図書室は静かなんだけど、今日の静けさはいつものそれとはやはり違っていて、
少し不思議な感じだ。
「どうかしたの、たかあきくん」
 愛佳がぼーっとしている俺の顔を覗き込んでくる。
「図書室ってこんなにも静かなところなんだな、って思ってさ」
 普段は静かな中にも鉛筆をさらさらと走らせる音や、小さな話し声がかすかに聞こえて
いるようなところだけど、俺たち以外に誰もいないからすごく静かだ。
「そうだよねぇ。今日はあたしとたかあきくんのふたりっきりだから……」
「そうだね、ふたりっきり……」
 って、ふたりっきり?
 どくん
 心臓の鼓動がワンテンポ速くなる。
 今更ながら、状況の特殊さに気がついた。
 それは愛佳も同じようで。俺から目を外して顔を俯かせていた。
 いつまで経っても慣れないのは俺たちらしいというか何というか。
「じゃ、じゃあ仕事はじめようか」
「はっはい、そうしましょう……だね」
 若干のぎこちなさを残しながら、とりあえず俺たちはいつもの作業をはじめるのだった。



 2時間ほど作業に没頭したところで休憩を取る事にした。
 愛佳を意識しながらの作業だったせいか、それともプレゼントをどう渡そうか考えていた
せいか、あまり作業ははかどってない。
 愛佳もあまり進行状況は芳しくないようで、
「たかあきくんのサルが取れないよぅ~……」
 と、ぼやいていた。
 人のせいにしないように。つか、サルって言うな……。
 愛佳の用意してくれたお茶とお茶菓子を楽しんで一息ついた後で、俺はいよいよ
プレゼントを渡すことにした。
「あ、あのさっ」
「はい?」
「誕生日……おめでとう」
「えっ、たかあきくん……覚えてて、くれたんだぁ……」
「愛佳の誕生日を忘れるわけ、ないだろ」
「うふふ、うん。ありがとうございます」
 愛佳は嬉しそうに微笑んで、ぺこりと頭を下げる。
「これ、プレゼント」
 俺はカバンの中から大きめの包み紙を愛佳に手渡した。
「うわぁ~、なんかすっごくおっきいよ? ここで開けてもいいの?」
「う、うん。いいよ」
 にこにこしながら包みを開いていく愛佳。そして、現れたものは。
「あの、たかあきくん?」
「なに?」
「これって……メイド服だよね?」
「う、うん。ま、愛佳に似合うかなって思って、さ。それに、書庫の作業も服が汚れたり
することもあるわけだし」
「そ、そうかも」
「もしよかったらさ、着替えてみてくれない?」
 …………。
 数秒の間を置いてから、
「え、えええ~~~っっ?? い、今ここでですか?」
「う、うん。愛佳なら、きっと似合うし可愛いと思う」
 言っててとてつもなく恥ずかしいセリフなのはわかっているが、こうでも言わないと
愛佳は着てくれないだろうし。
「今日は他に生徒もいないしさ、だいじょぶだって」
「そ、そうだよね。他に誰もいないし……た、たかあきくんがそう言うなら……」



 愛佳がメイド服を着てくれることを意外にあっさり承諾してくれて、ちょっと拍子抜け。
 いやいや、俺のお願いだから着てくれるんだよな。……と思ってもいいよな?
 俺は書庫から出て、図書室側で待機していた。さすがに同じ部屋で着替えるのは
愛佳も恥ずかしいらしい。や、俺も困るけどね。
「あ、あの、たかあきくん?」
「なに?」
「じゅ、準備できましたぁ~」
「そ、それじゃあ入るね」
 書庫から愛佳の声が聞こえてきた。
 い、いよいよメイド服を着た愛佳とご対面か。
 去年の学園祭でメイドさんの格好は見てるけど、その時とは違う興奮が俺を
包んでいる。



 どく、どく、どく。



 心臓は早鐘のように、さっきからせわしなく動いている。
 俺は意を決すると、書庫のドアを開いた。



「い、いらっしゃいませ……じゃなくてっ、お、おかえりなさいませ、たかあきさま」



 一瞬、意識が飛びそうになった。
 目の前に立っている愛佳はまぎれもなくメイドさんであり、顔を赤らめながらちょこんと
お辞儀をする様はとっても可愛らしくて、俺は思わず抱きしめそうになる衝動を
抑えるのに必死だった。



 愛佳はあらためてお茶の用意をしてくれている。それがなぜか新鮮な光景に見えるのは、
やはり愛佳がメイド服に包まれているからだろうか。
 って、俺はいったい何を考えているんだ?
 こうなってくると、雄二がメイドが好きな理由もなんとなくわかるような気がしてくるから
不思議なものだ。いや、俺にはそんな属性なんてないよ、……多分。
 そうは思っていても、ついつい愛佳の動きを目で追ってしまうのも事実。
 その時、愛佳がこっちをちらっと見て、顔を真っ赤にする。耳たぶまで赤くなっているような。
 ま、まさか視線に気づかれた?
 いやいや、決して見ていて悪いわけじゃないし、そう、俺が悪いわけじゃない、よな?
 準備を終えた愛佳が、ティーポットとカップをトレイに乗せて歩いてくる。
 その動きは、どこかぎこちない。よく見ると、腕なんかかすかに震えている。
 愛佳も、緊張してるのかな……。
 普段より危なっかしい手つきで俺の前にカップを置いてくれた。
「ど、どうぞ…」
「あ、ありがと」
 じっと俺を見つめる愛佳。……なんか緊張するな。
 俺はそーっとカップを取り、中に入っている琥珀色の液体を喉に流し込んだ。
「あ、いつもと違う…?」
「あ、わかる? 今日はちょっとだけ葉っぱをいいやつにしてみたの」
「うん、おいしいよ愛佳」
「ありがとうございますぅ~、たかあきさま」
「そ、その『たかあきさま』ってのはやめてよ。なんか恥ずかしいし」
「あ、あたしだってこの格好すごく恥ずかしいんだからぁ~。こ、こんな格好たかあきくんに
しか見せられないよぉ~。だから、たかあきくんにも恥ずかしくなってもらわないと」
 にこにこと微笑みながら話す愛佳は、いつもの愛佳の笑顔だった。
「あ、立ってないで座ってよ。メイドさんの格好だからって、無理に立ってる必要ないし」
 そう、愛佳はまるで本当のメイドさんのごとく、俺の横に控えていたのだ。
 そこまでこだわっているのがなんとも愛佳らしいというか。
「そ、それじゃあ失礼して…きゃあっ?」
 座りかけた愛佳は突然よろけたかと思うと俺のほうに倒れこんできた。



 ぼふっ



 俺はあわてて愛佳を抱きかかえた。
「だ、だいじょうぶ?」
「う、うん。ちょっと足がもつれちゃった」
 きっと、慣れない服だからだろう。それでもころばなくてよかった。
 ふう、っと俺は安堵のため息をついた。
 …………。
 ふと気づけば、俺の胸の中には愛佳がすっぽりと収まっていた。



 どっ、どっ、どっ、どっ



 心臓の音がますます早くなる。
「たかあきくん、すごくドキドキしてる」
「へ、変かな」
「ううん、あたしも、すっごくドキドキしてるから」
 愛佳が顔をあげて目を瞑る。
 これってやっぱり、アレだよな……。
 俺は愛佳にそっと、口づけた。



「誕生日おめでとう、愛佳」



「たかあきくん。…………あ、あの」
「なに?」



 ありがとう…。



 愛佳はそう言って、にっこりと笑ってくれた。



























おわり♪


















あとがき



PS2ゲーム「ToHeart2」のSSです。
��月1日は小牧愛佳さんの誕生日ということなので、書いてみました。
��日遅れなのですが(うわん)。
つきあいはじめて1年ほど経ってるはずなのに、どうしてこのふたりは
こんなにも初々しいんでしょうか。
やっぱり僕の筆力不足でしょうか……。
それでは、また次の作品で。



��005年5月2日 小牧愛佳さんのお誕生日の次の日~



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