2005/06/05

肩と肩のふれあう距離 (ToHeart2)(小牧愛佳)



業務報告~。
読み物広場に、SS「肩と肩のふれあう距離」を追加しました。
ToHeart2のヒロイン、小牧愛佳さんのSSです。
ふと思いついたので書いてみました。
上のリンクからでも下のリンクからでも、お好きなほうから
どうぞなのです~。
上はいつものhtmlで、下ははてな仕様になります。





肩と肩のふれあう距離(ToHeart2)(小牧愛佳)



「たかあきくん、そろそろお茶の時間にしようか?」
 …………。
「たかあきくん?」
 いつものように書庫でのたかあきくんとの作業中、そろそろ休憩を挟もうと
たかあきくんに声をかけてみたけど、返事がなかった。
 聞こえなかったのかな?と思ってもう一度声をかけてもやっぱり返事はない。
「?」
 あたしは目の高さの棚の本を何冊か抜き取って、そこから隣の通路を覗き
込んだ。
 ……いない。
 どこ行ったんだろう。
 あたしは本を戻して、今度はその隣の通路まで行ってみた……。



 いなくなってしまったたかあきくんを探して、書庫中の通路をくまなく
歩いてみたけど、たかあきくんはいなかった。
 
 どうして?
 書庫の作業が嫌になった?
 それとも、あたしが何かしたの?
 いったん考え始めると、悪い方向ばかりに考えてしまう。
「小牧愛佳は、たかあきくんにとって必要じゃなくなっちゃったのかな……」
 最悪の想像が浮かんでしまい、私は心の奥底がすごく寒くなった。
 ぞくり。
 寒い、よぉ……。
 こんなこと考えたくないのに……。
「お茶、いれようかな」
 嫌な考えを振り払うように、少しでも気を紛らわせるために、私はお茶の
準備をすることにした。



 こぽこぽこぽ……。
 水を入れたやかんを火にかける。
 いつもなら時間短縮も兼ねてポットのお湯を使うのだが、今日は出来るだけ
時間をかけたかった。
 お湯が沸騰するのをぼーっと眺めていたら昔の思い出が、いつも、欲しい
ものがもらえなかったこととかがいろいろと思い出されて。



 気がつけば、涙が一筋、頬を伝っていた……。



 私は制服の袖で涙をぬぐうと、準備の出来たティーセットを持ってテーブル
まで行った。



「……た、かあき……くん?」



 するとそこには、たかあきくんがソファに座って眠っていた。



 よかった、たかあきくん、どっか行ったわけじゃなかったんだぁ……。



 私はまたしても出てきた涙を袖でぬぐうと、寝ているたかあきくんを
起こさないように、そっとテーブルにティーセットを置いた。
 そしてちょっとドキドキしながら、たかあきくんの右隣に座った。
 いつもはたかあきくんの向かいに座るんだけど、今日は特別。うふふ。
 疲れていたのだろうか、たかあきくんはぐっすりと眠っていて目を
覚まさない。
「疲れてるのなら、言ってくれればいいのにぃ…」
 疲れてるときでも、私の手伝いをしてくれるたかあきくんのやさしさが
嬉しかった。
 寝ているから、平気だよね…。
 ほんのちょっとだけ、たかあきくんの右肩にふれてみる。
 すると、そこからじわ~っとたかあきくんのぬくもりが伝わってきた。



 あったかい……。



 人とふれあうこと。それも大好きな人が相手なら尚更だ。
 一度知ってしまった喜びがなくなると、こんなにも辛いなんて……。
 私はもうちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、たかあきくんに近づいた。



 そのとき、突然私の肩にたかあきくんの右手がまわされて、ぎゅっと
抱きしめられる形になった。
「た、たかあきくん?」
 とくんとくんとくんとくんっ
 私の鼓動はすごい速さで動き始める。



 わ、わたし今、たかあきくんに抱きしめられてるよぉっ……。



 お互いの身体がふれあっている部分からはぬくもりが伝わってきて。
 すごくあったかくって。恥ずかしくって。でも離れたくなくって。
 そんなことを考えてたら、たかあきくんのくちびるが近づいてくるのが
わかった。
 えっ、あのっ、それってもしか、し、てっ……



 …………。



 ……。






 漂ってくる紅茶の匂いに気がついて目を覚ますと、目の前に愛佳が
にこにこと笑いながら座っていた。
「あれ、愛佳。……ここは」
「あ、たかあきくんやっと目が覚めたんだぁ。待っててね、今お茶の準備
するから」
「ああ、ありがと……」
 ぼーっとする頭を振ってあたりを見回すと、どうやら自分が書庫にいると
いうことがわかった。
 そっか、疲れてたからちょっとだけのつもりでソファで休もうとしたん
だった。
 どうやらそのまま眠ってしまったらしい。
「はい、どうぞ♪」
 にっこりと笑顔も添えて、俺に紅茶を渡してくれる愛佳。
「ごめん、なんか俺寝ちゃってたみたいだ」
「ううん、疲れてたんでしょ? 私なら大丈夫だったから気にしないで」
 愛佳はやはりニコニコだ。
 どういうわけかごきげんのようだ。
「あ、でも……」
 ん?
「もうちょっとやさしくしてくれたほうがよかったかな」
「え?」
「たかあきくんって、結構強引なんだね」
「え、え?」
 お、俺、何かしたんだろうか。
 全然覚えてないんだけど……。
 ちょっとだけ感じる違和感といえば、くちびると右肩に残っている、
ほんのわずかなぬくもりだけだった。










































おわり♪


















あとがき
PS2ゲーム「ToHeart2」のSSです。
今回のネタは、半分実体験というか夢体験からヒントを得ました。
夢の中で、女の子と肩を寄り添って、そっと抱きしめて……という
シーンがありまして(わはー)。
や、ほんとにリアルに感触も覚えているぐらいでして。
なんでいいところで目が覚めるんだーと残念な気持ちでいっぱい
だったので、SSに昇華してみました(ぉ
ふと思ったけど、タマ姉だったらどういうシチュエーションになる
かなあ。
ちょっと考えてみてもおもしろいかも(ぇ
どうでもいいことですが、ちゃんとした形にしたToHeart2SSはこれで
��0本目となりました。自分でもびっくり(笑)。
それでは、また次の作品で。



��005年6月5日 もう夏だよな……と思った日



0 件のコメント:

コメントを投稿