2005/07/12

(ぷちSS)「はぴねす! ぷろろーぐ おまけ」(はぴねす!)(柊杏璃)



 はぁっ、はぁっ、はぁっ……。
「は、春姫ったら、いったいどこに行ったのよ~……」
 あたしは走り続けていた。
 それと言うのも、我が宿命のライバル、神坂春姫が逃げるからだ。
 なんで逃げるのかはわからないけど、逃げられたら追いかけるのが
筋ってものよね?
 さっきはようやく追いつけると思ったのに、春姫の近くにいた謎の
男子生徒がなんと!春姫を抱きかかえて逃げちゃったのよ。
 これはもう、何が何でも追いつかないと気が済まないわよね?
 学園中を西へ東へ、上へ下へ、あーんなところやこーんなところまで
走り尽くしたわ。
 それなのにアイツったら、ついにあたしの追跡を振り切ってしまった。
 敵ながらあっぱれと言わざるをえないけど、でも、今度会ったらただじゃ
置かないわよ……。
 はぁっ、はぁっ、はぁっ……。
 さすがの杏璃ちゃんもちょっと限界。少しだけ休憩しよう。
 そう思って、あたしは疲れた足を引きずって階段を一歩一歩登って
いった。



 がちゃり
 屋上の扉を開けると、まぶしい光があたしを照らし、爽やかな風が
あたしの身体を包み込む。
「う~ん、やっぱりここは気持ちいいわね……」
 あたしは屋上のフェンスにもたれて目を閉じる。
 そうすると、通り過ぎていく風をもっと感じられるような気がするから。
 しばらく風の抱擁を受けてから目を開けると、目の前にはあたしが探して
いたライバルがちょこんとベンチに座っていた。
「は、春姫?」
「あ、杏璃ちゃん。久しぶりだね」
 春姫はにっこりとプリンセススマイルを浮かべる。
 なんだかそれを見たら、さっきまで一生懸命追いかけていたことなんて
どうでもよくなっちゃった。
 け、決してあたしが負けたわけじゃないんだからね?
「ところで杏璃ちゃん。どうして屋上に?」
「それはこっちのセリフよ。春姫こそどうして」
 質問に質問で返すと、なぜか春姫は顔を赤くした。
「わ、私は、その……連れてこられたと言うか……」
 なんだか妙に歯切れの悪い返事の春姫だった。
 ぴきーん!
 唐突に気がついたあたしは、さらに尋ねる。
「そう言えば、さっき確か『お姫さまだっこ』されてたような……」
 あたしがそう言うと、
「そ、そそそそそんなことないですぅっ」
 わかりやすく動揺する春姫。
 ふふっ、こんな春姫を見るのも珍しいわね。もっと聞いちゃお。
「さっきの男子、もしかして春姫の彼氏?」
「ち、違います! 小日向くんとは会ったばかりですっ!」
 ふーん、小日向って言うんだ。
 あたしから逃げ切る脚力を持っているぐらいだから、今後もあたしの
障害にならないとも限らないしね。
 あたしは記憶の片隅に留めておくことにした。
「ま、あんまり聞いてもかわいそうだし、今日はこれぐらいにしておいて
あげるわ」
「今日はって、また今度聞くつもりなの……?」
「さてね。それじゃそろそろ帰りましょうか。春姫もいつまでもこんな
ところにいるわけじゃないんでしょ?」
 あたしが促すと、春姫はちょっと微妙な笑顔でこう言った。
「あ、私は保健室に行くから、杏璃ちゃんは先に帰って」
 保健室?
「保険委員の用事でもあるわけ?」
「ううん、そうじゃないんだけど……」
 またしても歯切れが悪い春姫。
 その時、あたしは春姫が右足を隠すようにしているのが見えた。
「もしかして、ケガしてるの?」
 あたしの問いかけに、春姫はぺろっと舌を出した。
「うん。さっき、ちょっとね」
 まったくもう、どうしてそういうことは早く言わないかなあ。
 あたしは春姫に肩を貸す。
「あ、杏璃ちゃん?」
「いいから、早く行くわよ」
「……うん」
 あたしは春姫に肩を貸しながら歩き始めた。
「杏璃ちゃんって、やっぱりやさしいよね」
「そ、そんなことないわよ。これはなんて言うか、そう!
『敵に塩を送る』ってやつよ! そうなの。そうに決まってるんだから」
 春姫はにっこりと笑う。
「ありがと、杏璃ちゃん」
 ああ、もう。だからその笑顔はやめなさいっての。
 今日だけなんだからね。
 明日からは、またライバルとして競い合うんだから、それを忘れるん
じゃないわよ、春姫っ!









おわり♪



あとがき



PCゲーム「はぴねす!」のSSです。
��月12日は柊杏璃ちゃんのお誕生日ということで書いてみました。
まだゲームは発売されてないので、細かい設定とかは完全に
オリジナルなのですが。
なんだかんだ言いながらも、杏璃ちゃんならこうしてくれるかな?
っていうイメージなのですよ。
ちなみに「はぴねす! ぷろろーぐ」は(ういんどみる)さんの
「はぴねす!」のページに載せていただいてますので、
そちらも合わせて読んでいただければ幸いです。
それでは、また次の作品で。



��005年7月12日 柊杏璃ちゃんの誕生日



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