2005/07/09

七夕月夜 (ToHeart2)(向坂環)



業務報告~。
読み物広場に、SS「七夕月夜」を追加しました。
ToHeart2のヒロイン、タマ姉こと、向坂環さんの聖誕祭用のSSです。
上のリンクからでも下のリンクからでも、お好きなほうから
どうぞです~。
上はいつものhtmlで、下ははてな仕様になります。





七夕月夜(ToHeart2)(向坂環)



「これで……どうだっ!」
 俺はカードを開いた。5枚のカードは左から5、6、7、8、9。
「す、すごいよタカくんっ。ストレートだよ~」
 横で見ていたこのみが驚く。
 そう、ストレートだ。なかなかこんな役にはお目にかかれない。
 だが、雄二の表情には変化が無い。
 なにっ?
「ふっ、やるな貴明。……だが、甘いっ!」
 雄二の掛け声とともに開かれたカードを見て、俺はがっくりと
うなだれた……。
 全てのカードがスペードのマーク。雄二の役は……フラッシュ
だった。



 その日は7月になってから毎日のように降っていた雨が、久しぶりに
お休みを取ったかのように晴れ間の広がった日だった。
 俺たち4人(俺、雄二、このみ、タマ姉)は、いつものように弁当を
食べた後、ポーカーで遊んでいた。ただ遊ぶだけではおもしろくない
ので、
『負けたやつが勝ったやつの言うことをひとつだけ聞く』
 という、特別ルールが設けられていた。
 …………誰だ、こんなこと言い出したやつは。



「さーて、どうしよっかなあ~」
 そう、俺は雄二に負けたのだった。
 厳密に言えばこのみとタマ姉にも負けている。このみには
「ととみ屋のカステラ3人前」(食べすぎだ)、タマ姉には「いつでも
ちゅーしていい権利」(なんだこれ)というモノを奪われた。
 この上雄二にまで負けるわけにはいかない、と俺は気合いを入れた
のだが、運命の神様は昼寝をしていたようで、俺は僅差ながらも敗北を
喫したのだった。
「よし、決めた!」
 あれやこれやと考えていた雄二がついに願い事を決めたようだ。
「あー、なるべく簡単な願いにしてくれよ? 無理なものは無理
なんだからな」
 とりあえず、釘を刺しておく。
「わかってるよ。じゃあ、言うぞ貴明」
「お、おう」
「今夜だけ、俺の生活と貴明の生活を交換しろ」
 …………はぁ?
「雄二、いまいち意味がわからないんだが」
「わかりやすく言うとだな、『今晩、貴明は俺の部屋で過ごせ』って
ことだな」
「あー、えっと、じゃあ雄二は俺の部屋で過ごすという事か?」
「そう」
 …まあ、それぐらいならいいか。
「わかったよ。今晩だけだぞ?」
 もう一度、釘を刺しておく。
「わかってるって~♪」
 ほんとにわかってるのかどうか全然わからないセリフだった。



「じゃあ、今晩はタカ坊が私の弟ってことね♪」



 それまで黙って話を聞いていたタマ姉がとんでもないことを
言い出した。
「え、ちょ、な、なんでそうなるのさ?」
 動揺する俺に対し、タマ姉はにこにこしながら続ける。
「放課後、迎えに行くから待ってなさいよね、タカ坊♪」
 タマ姉は弁当箱を片付けて、嬉しそうにさっさと歩いていって
しまった。
「んじゃ、貴明。がんばっれよぉ~」
 同じく嬉しそうに、雄二も歩いていった。
「タ、タカくん。……がんばってね?」
 いや、がんばってねって言われてもなあ……。



 授業が終わり、ホームルームも順調に終わった。
 と同時に、教室のドアが開いた。
「河野貴明さんは、いらっしゃいますか?」
 なぜか、シーンと静まりかえる教室。
 控えめな口調ながら聞く者の耳にしっかりと残る、そんな声。
「は、はい。河野くんならいますけど……?」
 動かないみんなの代わりに、委員長の小牧さんがみんなを代表して
答えた。
「そう。ありがとう」
 そう言って、ゆっくり教室に入ってきたのは。
 雄二の姉であり、このみと俺の幼なじみであり、俺の恋人でもある。
「向坂環です。河野貴明さんをいただいてもよろしいかしら?」
 タマ姉だった。
 タマ姉の問いかけに、みんないっせいに頷いた。
 ……頷くなよ、おい。



「あのさ、タマ姉。さっきのアレはいったいどういう意味なの」
 夕焼けに染まる道を、タマ姉とふたり並んで歩く。
「え、別に意味なんてないわよ。ただ、タカ坊がびっくりするかな
って思って」
 楽しそうな顔で笑うタマ姉。
 いや、びっくりさせるなら俺だけにしてほしい。ありゃ、どう
見てもクラス中がびっくりしてた。
「まあいいじゃないの。私たち、付き合ってるんだし」
 それはそうなんだけど、別に自分から言いふらすことでもないような。
「タカ坊は、イヤ?」
 俺の服の袖を摘まんで、首を傾げてこっちを覗き込むタマ姉。
 そんな顔されたら、イヤって言えないじゃないか。言うつもりは
ないけど。
「イヤじゃないけど、できればやめてほしい……かな」
 俺はタマ姉の顔色を窺いながら、おそるおそる口に出してみた。
「ふぅ、しょうがないわね。わかったわ、タカ坊のお願いだものね」
 と、やけにあっさり引き下がってくれた。
 あ、あれ?
 いつもなら拗ねたりするはずなのに、今日はどうしたんだろ。



「じゃあ、ちゅー1回♪」



 ずるっ
 俺は何も無い地面で足を滑らせた。
「ななな、何が『じゃあ』なんだよっ!」
「いいじゃない。減るもんじゃなし」
 ……減るんだよ、体力とか精神力とか。
「ほらほら早く。今なら誰も見てないわよ?」
 いや、そういう問題でもないんだけど……言っても聞いてくれないん
だろうなあ。
 俺は仕方なく、タマ姉の前に立って、両肩をそっと掴んだ。
 すると、ぴくっ、とタマ姉が動いた。
「……もしかして、タマ姉緊張してる?」
「し、してないわよ…」
 いつも余裕たっぷりなタマ姉も人並みに緊張してるんだな。
 そういえば、ゲンジ丸の時もそうだったっけ。
 決して人前では弱みを見せないタマ姉の姿を知っているのも、今の
タマ姉を知っているのも俺だけなんだ。
 そう考えたら、タマ姉の顔がすごく可愛く見えた。
 夕日のせいで茜色に染まったタマ姉の顔は、いつもと同じようで、
でもどこか違っていて。
 俺は吸い寄せられるように、タマ姉にくちびるを重ねた。



「じゃ、じゃあ帰りましょうか」
「う、うん」
 やさしいキスの後、ちょっとそっけない会話を交わして、俺と
タマ姉は歩き始めた。
 妙にお互いを意識してしまって、恥ずかしくて、ドキドキして。
でも、つないだ手はしっかり握って離さなかった。



「さ、タカ坊、入って」
「おじゃましまーす」
 向坂の家に着いた。いつも思うんだけど、やっぱりタマ姉の家は
大きい。ほんと、お屋敷って表現がぴったりだと思う。家政婦さんを
雇っているというのもすごいし。
「そう言えばさ、雄二が言ってたけど最近はタマ姉が料理作ってるん
だって?」
「ええ、そうよ。毎日作ってるわけじゃないけどね。せっかく私が
いるんだから、わざわざ家政婦さんの手を煩わせることもないでしょ」
 確かに。雄二もタマ姉の料理に関しては文句言わないしな。
「ちなみに、今日は家政婦さんがお休みだから、タマお姉ちゃんが
作りま~す」
「ぱちぱちぱち~」
「なんで口だけで拍手してるのかしら?」
 ぎゅう~
 タマ姉にほっぺたをつねられた。一応喜んでるのになんで
怒られるんだ……。
 そのままほっぺを引っ張られて、キッチンまで連れて行かれた。
「さてと、私は早速お料理を作るけど、タカ坊はどうする?」
 俺は赤くなったほっぺをさすりながら答えた。
「何か俺に手伝えることがあるなら、もう喜んで何でもするよ…」
 半ばヤケ気味に答えると、
「あら、何でもなんて……タカ坊ったら、大胆ね♪」
 ちょっとちょっと、タマ姉はいったいどんなことを考えてますか?
「ふふふっ、冗談はさておき。タカ坊にしてほしいことはこれといって
ないのよね…」
 それじゃあ俺はまったりと待つことにしようかな。
「じゃあ、お風呂掃除、お願いできる?」
「……了解であります」
 料理とは関係ないけど、『俺に手伝えること』って言った手前、
断れなかった。



 タマ姉が操るリズミカルな包丁の音をBGMに、俺は向坂家の
風呂掃除に勤しんだ。
 さすがお屋敷だけあって、風呂もデカい。こりゃ結構大変だなあ。
いつもは雄二が掃除やらされてるんだろうか。
 浴槽をスポンジでこすりながら、ふと思った。
「タマ姉は、毎日このお風呂に入ってるんだよな……」
 ……いかんいかん、 そうゆうことを考えるのはよくないぞ!
 とは思っても、一度考え始めたら止めようと思っても止まらない。
 タマ姉が、あの長い髪を洗っている姿。
 タマ姉が、石けんを泡立てている姿。
 タマ姉が、シャワーを浴びている姿……。
「タカ坊~、出来たからお料理運ぶの手伝ってちょうだい」
 びくっ!
「わ、わかったー」
 うう、つい妄想に耽ってしまった。俺、大丈夫なのかな……。



「さあ、召し上がれ♪」
 テーブルの上にはタマ姉が作った料理があたたかい湯気を
のぼらせている。
 今日のメニューは和食中心といった感じだ。
「いただきまーす」
 まずは目の前にある、さといもの煮っ転がしを口に運んだ。
「ど、どうかな?」
「うん、うまいよタマ姉」
「そ、そう?」
 俺の賛辞にタマ姉は満更でもない表情だ。
「いつもは店屋物とかコンビニ弁当が中心だから、こういう
『家庭の味』っていうの? それがすごく美味しく思えるよ。
実際うまいし」
「はぁ~、やっぱりそういう食事なのね……」
 タマ姉はちょっと呆れ顔だ。
「私が毎日タカ坊の家に通って作ってあげたほうがいいのかしら……。
いや、むしろタカ坊がうちにくればいろいろ手間もはぶけるし……」
 タマ姉が何やらぶつぶつと不穏当な独り言を言っているような気も
するが、俺は聞こえないフリで食事を再開した。
 がつがつと食べていると、
「あ、タカ坊。ごはんつぶがついてるわよ?」
 と言って、タマ姉が俺のほっぺについていたごはんつぶを取って、
ぱくり。
「うふふっ、もういつまで経ってもタマお姉ちゃんがいないとダメ
なんだから♪」
 いや、あの、否定はしないけど、なんでそんなに子ども扱い?
「あ、これって、もしかして間接キスになるのかしら?」



 ぶはっ



 俺は思いっきりむせ返った。
 なんかもう、すっかりタマ姉のペースだった。



 タマ姉の素晴らしい夕食を堪能した後は、お風呂の時間。
「タカ坊が掃除をしたんだから、先に入っていいわよ」
 と言うので、お言葉に甘えて入らせてもらうことにした。
 掃除の時も思ったが、やはりデカい。
 うちの風呂がそんなに小さいわけではないのだが、この大きさには
ちょっと勝てないだろう。
 俺は誘惑に耐えられず、大きな湯船に飛び込んだ。
 足を思いっきり伸ばしてもまだまだ余裕がある湯船ってのは、
やっぱり気持ちいいなあ。
「タカ坊? 湯加減はいいかしら?」
「あ、うん。ちょうどいいよ、タマ姉」
 ガラス戸の向こうに、特徴的なネコミミシルエット。間違いなく
タマ姉だ。
 いや、今この家には俺とタマ姉だけしかいないんだけどね。
「じゃあ、私も入るわね♪」
 え?
 そう言うやいなや、タマ姉はガララ~っとガラス戸を開けて入って
きた。
 って、ちょっと?
 俺はあわてて手で大事な部分を隠すと、湯船に潜る。
「どう、タマお姉ちゃんのプロポーションは?」
 タマ姉は腰に手をあてて妙なポーズ。
「…………」
「なんで何も言わないわけ?」
「や、だって水着着てるし……」
 タマ姉は残念なことに(?)水着を着用していた。
「な~んだ、やっぱり着てないほうがよかったんでしょ?」
 それはその、なんと言うか、どちらかと言えば……。
 いや! 今はマズイ。激しくマズイ!!
「着てて。お願いだから」
 俺は大変なことになりそうな部分を必死で押さえつけながらタマ姉に
お願いした。
「ふぅ、しょうがないわね。わかったわ、タカ坊のお願いだものね」
 と、やけにあっさり引き下がってくれた。
 あれ、何か聞き覚えのあるようなフレーズだな……。






「じゃあ、ちゅー1回♪」



 ごばぼぼぼ……
 俺は湯船に沈んだ。
 またか、またこのパターンなのか?
「ほら、じっとしてなさい……」
 タマ姉は俺の両頬に手を添えると、目を潤ませながらくちびるを
重ねてきた。



 ………………。



 どれぐらいの間キスをしていたのだろう、とりあえず頭がぼーっと
するぐらい長かったのは確かだ。
 お互いのくちびるが離れると、銀色の雫がきれいな放物線を描いた。
「じゃ、じゃあ俺もう上がるからっ」
 そう言い残して、俺はダッシュで風呂から上がった。
 とてもじゃないけど、恥ずかしくてタマ姉の顔を見ていられない。
そうじゃなくても水着姿のタマ姉は可愛くていつもと違ってていい匂いが
して、あのまま一緒にいたらきっと、俺は……。



 ろくに身体を拭きもせずに、俺は雄二の部屋に転がりこんだ。
 はぁ、はぁ、と俺の息遣いだけが聞こえる。



 どうして、こうなっちゃうんだろ。



 俺はタマ姉のことが好きで、タマ姉も俺のことを好きでいてくれて。
 お互いの気持ちは一緒のはずなのに……。
 俺だって、タマ姉とキスしたい。キスだけじゃなくて、その先も。
 だけど、そこまで求めてしまってもいいんだろうか。
 タマ姉のアプローチは以前よりもすごくなっているけど、だからといって
それがOKのサインかどうかなんてわからない。
 タマ姉にとってはいつものじゃれ合いのつもりなのかもしれない。
 もし拒絶されたらって思うと、どうしてもそこから先に進めない。
 自分が傷つくのが怖いだけなんだってわかっている、つもりなのに……。



 眠ろうと思って布団に入っても、眠れやしない。
 考えるのはタマ姉のことばかり。
 まわりはすごく静かで、窓から差し込んでくる月の明かりだけが光源の、
少し幻想的とも思える空間の中に、俺はいた。
 その時、みしっみしっ、と廊下を歩く足音が聞こえてきた。
 ……タマ姉。
 こんこん…
 控えめなノックの音の後に、ゆっくりとドアの開く音が続く。
「タカ坊……もう寝ちゃった?」
 もちろん寝てない。けど、寝たフリをしていた。
 タマ姉はそっと入ってきて、俺の枕元に立った。
 …………
 しばらくじっと無言の時が続いた。
 それからようやくタマ姉は静かに語り始めた。
「ごめんね…、タカ坊。私、タカ坊がうちに来るってわかった時から、
すごくうれしくて。今日の午後の授業なんか全然頭に入らなかった。
考えてるのはタカ坊のことばかり…。
いつもと同じようにしてるつもりだけど、それでも胸はドキドキ
しちゃって、自分でも自分のことが抑えられないぐらい」
 そこでタマ姉は一旦言葉を止めて、



「どうして、なの……かなっ…う、ううっ……」



 この言葉を聞いた瞬間、俺は反射的に起き上がってタマ姉を抱きしめて
いた。
「タ、タカ坊?」
 俺は最低だ。自分のことばかり考えて、タマ姉がどう思ってるかなんて
考えてなかった。
 タマ姉だって不安なんだ。それは、今日の帰り道のキスのときに
わかってたことじゃなかったのか?
 何より最低なのは、タマ姉を泣かせてしまったという、その事実だった。
「ごめんタマ姉……。俺、俺タマ姉のこと好きだから。
ほんとに好きだから」
 俺はタマ姉の涙をそっと拭き取った。
「タカ坊ぉ……えっえっ……うぁぁ」
 タマ姉はまるで子どものように泣き続けた。
 そんなタマ姉は今までに見たことがなくて、新鮮で、なんだか
可愛かった。
「ほら、泣き止んで?」
 俺は泣き止まないタマ姉の涙を、そっと舌で舐め取る。
 タマ姉が泣き止むまでぎゅっと抱きしめて、キスをした。



「あの、私の部屋にお茶が用意してあるから、来ない?」
 タマ姉が上目遣いで尋ねてくる。もちろん俺は、
「うん、喜んで」
 と答えた。
 タマ姉に袖を引かれてタマ姉の部屋へ。
「今、入れるね」
 電気ポットからこぽこぽとお湯を急須に注いで、お茶を出してくれた。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
 湯のみからゆっくりと湯気が立ちのぼる。
 少し開いた窓からはそよそよとやさしい風が入ってくる。
 月明かりは静かに俺たちを照らしていた。
 静かな時間。
 会話はないけど、お互いへの気持ちはいっぱいだった。
 そして、柱時計が12回、音を刻んだ。
「あ、もう12時まわっちゃった」
「そろそろ寝る?」
 俺はタマ姉に尋ねてみると、ふるふると首を振った。
「ううん、それよりも今日は何の日か知ってる?」
「知ってるよ。日付が変わって7月7日。七夕だよね」
「そ、そうね」
「織姫と彦星が一年に一回だけ出会う日だ」
「う、うん」
「……そして、タマ姉の誕生日だよね。おめでとう、タマ姉」
 タマ姉は俺の言葉を聞いた途端、俺に抱きついてきた。咄嗟のことに
支えきれず、俺はベッドに押し倒された。
「覚えててくれたんだぁ……」
 耳元で囁く声はとっても甘くなっていた。
 見つめ合って、静かにくちびるを重ねる。
「誕生日なんだから、タマ姉のしたいこと、なんでもさせてあげるよ」
「もう、バカ……」
 タマ姉は顔を真っ赤にしていた。多分、俺も。
 それから先は、言葉は必要なかった。



 ……………………
 …………
 ……



 ゆさゆさと誰かが俺をゆさぶっている。
 うーん、もう少し寝ていたいのに。
「ほら、そろそろ起きないと遅刻しちゃうわよ?」
 うーん、後5分……。
「もう、しょうがないなあ」
 ちゅっ
 くちびるにやわらかな感触を受けて、俺の意識は覚醒した。
「んぁ、タマ、姉?」
「おはよ、タカ坊。もう朝ごはんの準備も出来てるんだから、
早く起きなさい」
「うーん……」
「……こっちのほうは元気なのにね」
 タマ姉の手が、するっと俺の大事な部分に触れた。
「うわあぁ?」
 びっくりして俺は飛び起きた。
 朝っぱらからなんてことするのさ、タマ姉!
「昨日あれだけがんばったのに、まだそんなに元気なの?」
 や、そんなこと言われても……。
「とりあえず、7回までは大丈夫みたいね……ふふっ」
 や、だから知らないってば。
 早く来なさいよ、と言い残してタマ姉は部屋を出て行った。



 タマ姉が作ってくれた朝ごはんを食べて、俺とタマ姉は一緒に家を出た。
「あ、そうだ。はい、タカ坊」
 タマ姉は唐突にそう言って、目を閉じる。
「え、何?」
「ちゅー1回。これからは毎朝タカ坊から愛のエネルギーを充填する
ことにしたから」
 毎朝って……それにその「ちゅーの権利」はいつまで続くんでしょうか。
「あら、決まってるじゃない。ずっとよ♪」
 あーもう。
 俺はそっとタマ姉にキスをした。
「じゃ、いこっ♪」
 タマ姉はうれしそうに俺の手を掴むと、歩き出した。
 これからも、きっとこうなんだろうな。
 あまり未来のことは考えたくないけど、きっとタマ姉と一緒なら
なんだってできる。
 タマ姉にふさわしい男になるように、タマ姉と一緒にがんばっていこう。



『タカ坊は、生涯ワタシのことを愛しつづけることを誓います』



 幼い頃に交わしたあの約束。
 これからも俺たちは、一緒に歩いていく。



















































おわり♪


















あとがき



PS2ゲーム「ToHeart2」のSSです。
��月7日はタマ姉のお誕生日ということで書いてみました。
って、2日も遅れちゃってますが……。
なんかよくわからない内容ですが、タマ姉好き好き好きーな
気持ちが伝わると嬉しいです。
それでは、また次の作品で。



��005年7月9日 タマ姉の誕生日と七夕……の2日後(えー



0 件のコメント:

コメントを投稿