2005/08/24

(ぷちSS)愛佳の横顔 (ToHeart2)(小牧愛佳)






 目が覚めたら、俺はリビングに居た。
 あれ、なんでこんなところにいるんだ……?
 見慣れたソファに見慣れたテーブル。ここは間違いなく、
長年暮らしてきた河野家のリビングだ。
 いつもだったら自分の部屋のベッドで寝ているはずなんだが。
 えーっと、確か昨日は……。



 …………。



 …………そうだ。俺の誕生日だ。
 俺のためにみんな集まってくれて、ここでパーティーを開いて
くれたんだっけ。
 だんだんと思い出してきたぞ。
 いつぞやのるーこのお誕生日会のように、昨日も大騒ぎだった。
 なんでコーラで酔っ払ってしまうんだろうな、と思いながら
意識が途絶えたのをなんとなく思い出した。
 楽しかったことは楽しかったんだけど、ちょっとだけ寂しそうな
愛佳の横顔も思い出した。
 みんなの相手をしてたから、あまり話することができなかった
なあ……。
 そんなことを考えながら、トイレに行こうと廊下に出ると、
キッチンのほうからかすかに物音が聞こえた。



 ??



 俺の両親は今海外に行ってていないので、この家には俺が
ひとりで暮らしている。
 だから、物音の要因となるものは俺以外にないはずなのだが。
 俺は物音を立てないようにそーっとキッチンに近づく。
 すると、「かすかな物音」の正体が徐々に判明してきた。
 それは、リズミカルな小気味良い包丁の音だったり、やかんの
お湯が沸騰する音だったり。
 そう、料理の音だった。
 もしかして、このみが来てくれてるんだろうか。それとも、
まさかとは思うけどタマ姉か?
 わずかに開いているドアの隙間から中を伺うと、そこに居たのは。



「あ、たかあきくん。おはようございますぅ~」



 いつもの笑顔を浮かべながら、制服の上にエプロンを着けて
料理をしている小牧愛佳だった。



「もうすぐ朝ごはんできますから、ちょっとだけ待っていて
くださいね?」
 そう言いながらも愛佳の手は休むことなく、手際よく動いている。
 時々、書庫の作業の合間のお茶の時間の時に愛佳のエプロン姿を見た
ことはあったけど、今日の愛佳はなんだかその時よりちょっとだけ
雰囲気が違っていた。
 なんか、こういうのっていいよな……。
 そう思いながら愛佳の背中を見ていると、俺の視線に気づいたのか、
唐突に振り返って恥ずかしそうに愛佳は言った。
「た、たかあきくん……あ、あんまりおしりばっかり見ないでください…」
 …………見てないっちゅーに。



 愛佳のおしりをじろじろと見ていたというとんでもない濡れ衣を
着せられて危うく朝食抜きになるところだったが、なだめすかして
とりあえず機嫌を直してくれた。
「はい、どうぞ~」
 御飯をよそって俺に茶碗を渡してくれる愛佳。
「ありがと」
 ごはんを受け取って、準備は整った。
 テーブルの上にはオーソドックスなメニューが並んでいる。
 目玉焼き、ベーコン、お味噌汁にキャベツの千切り、プチトマト。
 うちのどこにこんな食材があったんだろうか、とどうでもいい
疑問が浮かんだが、それよりもうまそうな匂いに食欲が刺激された。
「いただきま~す」
 
「ごちそうさまでした」
「おそまつさまです~」
 ありふれた料理だけど、好きな人が自分のために作ってくれた
ものだと思うと、何倍もおいしく感じられる。
 今朝はそのことがよくわかった。
「でも、どうして朝ごはん作ってくれたんだ?」
 俺は当然の疑問を愛佳にぶつけてみた。
「あ、それはね、向坂くんのお姉さんに頼まれたからなの」
 タマ姉に?
「『タカ坊のこと、よろしくね』って。いいお姉さんだよね~」
 にこにこと嬉しそうに話す愛佳。
 決してタマ姉はそういう「いいお姉さん」の部分だけでできて
いるわけではないのだが、わざわざ水を差すこともないだろ。
 つーか、余計なことを言ったら後でタマ姉に何をされるか…。
「それに、泊めてもらったお礼もあるかなぁ」
「え?」
「だからぁ~、ゆうべここに泊めてもらったお礼」
 ……な、なにぃ~~~!!!



「はじめての外泊、だったんですよ?」



 うれしそうに話す愛佳。
 えっ、うそ、そんな大事な時に俺はどうして寝ちゃってますか。
「気持ち良さそうなたかあきくんの寝顔、可愛かったなあ……」
 ね、ね、ね、寝顔まで見られてるーーーーー!!!
「ど、どうして?」
「向坂くんのお姉さんにお願いされちゃいましたから」
 ……タマ姉、やってくれたぜ。
 俺がぐーすか寝て起きそうに無いのがわかってたから。
 そう、そうに決まってる。タマ姉ならやりかねない。
 まあ、なんつーか、せっかくの機会だったのに何も出来なくて
非常に心残りという気持ちはあるけど、嬉しそうな愛佳の横顔が
見られたからいいか、と思った。



「おはようタカ坊。ゆうべはいい夢でも見られたかしら」
 そんな挨拶とも判断がつかない言葉を皮切りに、学園にいくまでの間
ずーっとタマ姉にからかわれ続けていた。
 わかってたことだけどね……。
 それでも、隣にいる愛佳がずっと笑っててくれる。
 それだけで、俺は元気でいられる。そう思った。
「そうそう、たかあきくんったらおもしろい寝言まで言ってたん
ですよぉ~」
「へぇ~、それはぜひとも聴きたいわね」
 ……元気でいられる、よな?









おわり♪


















あとがき



PS2ゲーム「ToHeart2」のSSです。
なんだか久しぶりに書いたら愛佳の性格がちょっといぢわるに
なってました(わはー
タマ姉以外にいじられるのは新しいパターンですな。
それでは、また次の作品で。



��005年8月24日 朝霧玲一さんの誕生日(うわー
 



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