2005/10/04

(ぷちSS)「ネコミミメイド瑞穂ちゃん」 (処女はお姉さまに恋してる)






「お帰りなさいませ、ご主人様…」
 僕は楓さんの姿を思い出しながら、ぺこりと頭を下げた。
「さっすが瑞穂ちゃん♪」
 まりやが楽しげに微笑む。
「お姉さま……とっても可愛らしいのですよ……」
 奏ちゃんが目をきらきらさせながら僕を見る。
「み、瑞穂お姉さま、すごい……」
 由佳里ちゃんが頬を赤く染めて、僕を見つめていた。
 学生寮の入り口でみんなを出迎えた僕の格好は、いつもの制服ではなく、
メイド服に身を包み、さらにはメイドキャップの代わりにネコミミを着用し、
オマケにぴょこぴょこ動くしっぽまで着けていた。
 ううっ、は、恥ずかしいよぉ……。



 それは、新しい年を迎えた1月初頭の、まだ学院がはじまる2日前の物語。



 実家から寮に戻ってきていた僕らは、いつものように食後にみんなで
ゲームをしていた。
 まりやがいたくお気に入りの「波乱万丈人生劇場RX」だ。いつも想像の
斜め上を駆けていく内容に、普通とは違った意味で盛り上がってしまう
ゲームである。
「今日はさ、特別ルールを設けようと思うんだけど、どうかな?」
 ゲームをはじめる前に、まりやが提案した。
「……特別ルールって、どんな?」
 僕は当然の疑問をまりやに投げかける。まりやの提案って、ろくでもない
ことが多いからなあ…。
「いや、たいしたことじゃないんだけどさ、『最下位の人は一着になった人の
言う事をひとつだけ聞く』ってんだけど」
 十分大したことだと思うんだけど。由佳里ちゃんも奏ちゃんも少し困惑
気味だ。
「あ、あの、まりやお姉さま? それって、もし負けたらどんなお願いでも
聞かないといけないんでしょうか……」
「いんや、もちろん常識の範囲内でよ? あたしもそこまで鬼じゃないって」
 そう言って、からからと笑うまりや。あ、あやしい…。
「わ、私は構いませんけれど…」
 奏ちゃんが控えめに賛成する。まあ奏ちゃんは強運の持ち主だからいいの
かもしれないなあ。
「か、奏ちゃんがそう言うなら…」
 ということで、由佳里ちゃんも賛成した。
「じゃあ、決定ね。瑞穂ちゃんもオッケーよね?」
 と、賛成多数で僕の意見は関係なく、特別ルールが適用されることが
決まった。
 後から思えば、これが全ての元凶だったことを、この時の僕は知らなかった。



「う、うそ……」
 序盤はいい感じに進んでいたものの、中盤を過ぎたあたりからギャンブラー
人生街道まっしぐらのまりやの攻撃を受け続け、奏ちゃんの信じられない
ぐらいの強運で職を失い、最後に由佳里ちゃんとの全てを賭けた運命の
選択に、僕は敗れてしまった。
「ご、ごめんなさい、瑞穂お姉さま」
 由佳里ちゃんがすごく申し訳なさそうな顔で僕に謝る。
「い、いいのよ。由佳里ちゃんが悪いわけではないんだもの」
 少々、声が裏返っていたが、由佳里ちゃんを責めるわけにもいかない。
 僕は精一杯の笑顔を浮かべた。
「さーてと。瑞穂ちゃん、『特別ルール』覚えてるわよね?」
 トップでゴールしたまりやが嬉しそうに笑った…。



 まりやの願い事は「今日一日、ネコミミメイドさんになること」だった。
 なぜかメイド服もネコミミも所持していたまりやから一式を借りて、
僕は渋々着替えた。ま、負けたんだからしょうがないよね…。
 みんなが外から帰ってくるところを出迎える、ということになり、僕は
うちでメイドさんとして働いてくれている楓さんの姿を思い出しながら、
ぺこりと頭を下げた。
「お帰りなさいませ、ご主人様…」



「しっかし、瑞穂ちゃんはよく似合ってるよね~。あたしの目に狂いは
なかったか。あっはっは」
「お姉さま、本当によくお似合いなのですよ~」
「すっごく素敵です、瑞穂お姉さま!」
 3人が誉めてくれるけど、はたして喜んでいいものやら。
「んじゃ、せっかくだからお茶でも淹れてもらおうかな」
「はい。では皆様、食堂でお待ちくださいませ」
 僕は丁寧にお辞儀をしてから、お茶の準備に取り掛かった。
 奏ちゃんがお茶なら自分が入れると言ってくれたけど、僕は丁重に断った。
 不本意ではあるけど、罰ゲームなんだから自分でやらないとね。
 見よう見まねでお茶の準備をして、それぞれの前にカップを置く。
「はい、まりやさん」
「ありがと」
「どうぞ、奏お嬢さま」
「あ、ありがとうございますなのですよ…」
「どうぞ、由佳里お嬢さま」
「ありがとうございます♪」
 それぞれの反応の違いがなんだかおかしかったけど、喜んでくれるのは
悪い気分じゃなかった。
 いつもは奏ちゃんがお茶を淹れてくれることが多いけど、たまには
こういうのもいいなあ。もしかして、これが奉仕する喜びってこと
なのかなあ。
 そんなことを考えていると、
「瑞穂ちゃん、なんだかまんざらでもなさそうな顔してるわね。どう、
これから私たちの専属メイドさんになるってのは?」
 とまりやに言われたので、僕は少し考えてから答えた。
「そうですね…。奏お嬢さまと由佳里お嬢さまのお世話なら喜んで♪」
「…ちょっと瑞穂ちゃん、それどういう意味~?」
 楽しげな笑い声が、寮の食堂にこだました……。



つづく、かも?(ぇ



あとがき



はい~、「処女はお姉さまに恋してる」まとめサイトさんの10月3日付けの
コメントに触発されたので、書いてみました。
ネコミミメイドさんって難しいですね。普通のメイドさんになっちゃいました。
もっと勉強しないとダメですね。
幸い、瑞穂ちゃんには奉仕の精神が芽生えたようなので、次回があれば
その時にはもっとうまく書きたいものですよ(笑)



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