2006/05/12

(ぷちSS)「五月病」(夜明け前より瑠璃色な)



「はぁ~~~」
「どうしたんですか、達哉さん。すごく長い溜息ですけど」
 左門でのアルバイトを終えて帰ってきた達哉は、リビングのソファで
ぐったりとしていた。
「なんだか最近こんな調子なんだよ。疲れてるわけじゃないんだけど」
 ありがとう、とミアからお茶を受け取りながら、達哉は答える。
「もしかして、お兄ちゃん五月病なんじゃないの?」
 食後のアイスを美味しそうに食べながら、麻衣が言った。
「五月病、とはどんな病気なのかしら、さやか?」
 フィーナは聞いたことがない言葉だったようで、さやかに尋ねる。
「そうですねえ、新しい生活が始まってひと月経った頃に、鬱的な気分や
無気力な状態になること、でしょうか。五月頃によくある症状なので、
そう呼ばれているみたいです」
「なるほど。で、どうなの達哉?」
「どうと言われても、菜月や麻衣じゃあるまいし、俺にはよくわからないな」
「菜月さんや麻衣さんは、とても元気そうなんですが…?」
 左門での菜月や、目の前でアイスを頬張っている麻衣を見て呟くミア。
「ああ、『五月病(ごがつびょう)』って読み方じゃわからないかも」
「ということは、えっと『五月病(さつきやまい)』かしら?」
 さやかが人差し指を頬に当てながら考える。
 さつきやまい、さつき や まい、なつき や まい、菜月 や 麻衣。
 あ……。
「達哉くん、それはさすがにどうかと思うの」
「お兄ちゃんのギャグこそが、五月病だったんだね……」
 五月にしては薄ら寒い雰囲気が、朝霧家のリビングを支配した。
 おもしろいと思ったんだけどなあ……。



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