2006/08/31

(ぷちSS)「朝顔」(夜明け前より瑠璃色な)(フィーナ・ファム・アーシュライト)






 ぱちっと目が覚めたのは、セットしておいた目覚まし時計よりも少しだけ
早かった。
 なんとなく清々しい気持ちでベッドから起きると、静かに階段を
降りてリビングに入る。
 キッチンからは一定のリズムにのった包丁の音。ミアが奏でるその音は、
もうこの朝霧家には馴染みの音楽になっていた。
「おはよう、ミア」
「おはようございます、達哉さん」
 ミアに声をかけてからリビングのガラス戸を開けると、さわやかな風が
入り込んできた。
 達哉はサンダルを履いて庭に出ると、植木鉢のところまで歩く。
「お、今日も元気に咲いてるな」
 植木鉢には、アサガオの花がきれいに咲いていた。
 地球の植物を育ててみるのもいいんじゃないかと、フィーナにアサガオの
種と植木鉢をプレゼントしたのは夏休みの最初の日。
 最初は慣れない園芸に不安そうだったフィーナだが、アサガオが大きく
育つにつれて、だんだんと笑顔が増えていった。
 アサガオもフィーナの想いに応えるように順調に育ち、今では毎日きれいな
花を咲かせている。
 じょうろに水を汲んで戻ってくると、アサガオと同じような髪の色の
女の子がほほ笑んでいた。
「おはよう、フィーナ」
「おはよう、達哉」
 達哉はいつものようにじょうろをフィーナに渡す。フィーナはとても
嬉しそうに、アサガオたちに水をやっていた。
 いずれアサガオは枯れてしまうが、種は残る。フィーナはその種を月まで
持っていくことを決めているようだ。
 地球でフィーナが育てたアサガオの種が、月で新しい命を咲かせる。
 その光景を思い浮かべると、達哉はとても嬉しくなる。月と地球では環境が
違うから最初からうまくはいかないかもしれないが、フィーナならきっと
やり遂げるだろうと思う。
「ねえ、達哉。アサガオはとても素敵ね。だって、毎日こんなにも
きれいな花を咲かせて私たちを楽しませてくれるのだから」
 そう言ってほほ笑むフィーナ。
「俺は、フィーナが毎朝見せてくれる笑顔も好きだけどね」
「達哉ったら……」
 ほほを染めるフィーナ。
 毎朝この笑顔が見られるなら早起きも悪くない、と達哉は思った。
「フィーナさま~、達哉さ~ん、朝食の準備ができましたよ~」
 ミアの声にそれぞれ返事をしたふたりはキッチンへ向かう。
 しばらくして、いただきますと揃った声が庭にまで聞こえた。
 そよそよと風が吹き、アサガオがゆれていた。












おわり



あとがき



おっけ、書き上がりました。
日常のひとコマですから量としては少ないですが、忘れないうちに
書いてみました。
執筆中に操作ミスで書いた分が全部白紙になった時は泣きたくなりましたが、
書き上げたら元気になれました(笑)
ちなみに、ウィキペディアでアサガオの花言葉を調べてみたら、ふたつめと
みっつめがイメージに合わなかったので、引用をやめたのですが、果たして
よかったのか悪かったのか。
「明日もさわやかに」は良いのですが、「はかない恋」や
「貴方に私は絡みつく」はどうかなあ(わはー



それでは、また次の作品で。



��006年8月31日 8月最後だけど夏はまだ終わらない日♪



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