2006/09/29

(ぷちSS)「月の光、地球の光」(夜明け前より瑠璃色な)(フィーナ・ファム・アーシュライト)






 今日は疲れていたこともあって、いつもよりも早めに布団に入ったの
だが、どうにも寝付けない。
 しばらく布団の中で眠ろうとがんばってみたが結局無理で、俺は
気分転換に飲み物でも飲もうと階段を下りた。
 冷蔵庫から麦茶を出して飲んでいると、
「誰かいるの?」
 という声がした。
「あ、ごめん。起こしちゃったかな。ちょっとお茶を飲んでただけだよ」
「あら、達哉だったのね。明かりぐらいつけたほうがよいのではなくて?」
 窓から差し込む月明かりに映し出されたフィーナの顔は、にっこりと
微笑んでいた。



 どうやらフィーナも眠れないらしく、俺がリビングのガラス戸を少し
開けてソファに座るとフィーナも俺の隣に腰掛けた。
「気持ちのいい風ね」
 かすかに聞こえる虫の声とともに、風がそよそよとリビングに入ってくる。
「9月ももうすぐ終わりだからね」
 日中はまだ暑い日差しが降り注ぐこともあるが、朝や夜はびっくりする
くらい涼しいこともある。
「カレンに感謝しなければいけないわね。わざわざこの時期を選んで
地球での公務の予定を組んでくれたみたいだから」
「そうだな。おかげでフィーナの誕生日を祝うことができたし」
 今日、9月29日はフィーナの記念すべき誕生日だ。本来なら月に
戻っていたフィーナは月で誕生日を迎える予定だったのだが、急に地球での
仕事が決まったらしく、2日前に朝霧家に再びやってきていたのだ。
 思いがけない出来事だったが、せっかくフィーナがいるのだからと、
朝霧家・鷹見沢家のみんなが協力して、盛大にフィーナの誕生日を
祝うことができた。
「でも、少し月の人たちに申し訳ない気がするな。スフィア王国の人たちも
フィーナの誕生日を祝うために準備していたんじゃないのか?」
「そうね、皆には申し訳ないと思うのだけれど……」
 フィーナはそこで言葉を止めると、リビングからそっと庭に出て空を
見上げた。空には、美しく輝く白い月が浮かんでいる。
「私は、今日地球にいられてよかったと思っているわ。だって」
 フィーナはくるりと振り向くと、俺を見つめて言った。
「ここには、あなたがいるもの────」



 結局、眠りにつけたのは空が白み始める頃だった。
 好きあっている者どうしが手を伸ばせば届く範囲にいるのだから、
何があったかなんて言うまでもない。
 それは、月の光だけが知っていること。



 そして二日後に、フィーナは来た時と同じく、慌ただしく帰っていった。
 月と地球のために、そしてふたりの未来のためにフィーナはいつでも
努力している。



 俺もがんばらなくちゃな。



 月の光を浴びながら、俺は思った。
 地球の光が照らし出すフィーナのそばにいられるように、と。



























おわり



あとがき



PCゲーム「夜明け前より瑠璃色な」のSSです。
ふぃ~、なかなか難しいですね。
急にクールなお話を書こうと思ってもうまくいかないですよ(わは



それでは、また次の作品で。



��006年9月29日 フィーナのお誕生日♪



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