2007/03/13

風が春を運んでくる



うわあん、なんで夕方の4時から現場に行かなきゃなんないんだよぅ。
おかげで帰りが遅くなったじゃないかぁ……。
でも、これも給料の内と思ってがんばろう。






 あまい香りとふわふわな感触。やわらかでやさしくあたたかく。
「……や、…つや」
 誰かが呼んでいる。
 この感覚はもったいないけど起きなきゃな、と思った。
「達哉!」
 目を開けると、エステルさんが俺の顔を覗き込んでいた。
「おはよう、エステルさん」
「まったく……しかたのない人ですね」
 と言いながらも、エステルさんは笑ってくれた。



 起き上がろうとしたら、エステルさんに肩を掴まれ、寝かされた。
「いけません。まだ寝ていてください」
 どうして? と言う気持ちが表情に出ていたのだろう。
「達哉、頭は大丈夫ですか?」
 と、エステルさんが尋ねてきた。
 あの、その言い方はいろいろと誤解を招きそうなんですが。
 しかし、エステルさんの真剣な表情を見て、俺も茶化さずに答える。
「ええ、大丈夫ですよ」
 と。
 よかった、と呟きエステルさんは豊かな胸を撫で下ろした。
「あれ、そういえば、確かまめまきをしていませんでしたっけ」
「はい。それで、その……」
 エステルさんが言いにくそうにしていたことを聞き出してみると、
どうやら俺はエステルさんの『まめ』を受けてノックアウトされた、らしい。
 なるほど、道理で部屋で寝ているわけだ。
「すみません、わざわざ俺のために」
「いえ、謝らなければならないのは私のほうです。ごめんなさい……」
 しゅん、とうな垂れているエステルさん。
 別に怒ってはいないんだけど、そう言っても納得してくれないかもしれない。
 そう思った俺は、少し意地悪をすることにした。
「それでは、ひとつだけ俺のお願いを聞いてくれませんか?」



今日はここまで。次回でいよいよ最終回かな。
うむむ、予定よりもずいぶん長引いてしまいました。



それでは、明日もエステルマジカルがんばります。



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