2007/03/14

まめまいて、じかたまる



肩が異常に重いのです。
人手が足りないから現場仕事、というのもわかりますが、まだ描くべき
図面が残っているのですが。
これも給料の内か。とはいえ、給料以上の働きをしているような気もします(えー



「ど、どうぞ」
 声が震えているのは、決して達哉がキライだからではない。それでも、
はじめてだから緊張しているのは仕方ないかもしれないが、それを
達哉に知られたくはなかった。
「いいですか、エステルさん」
 目を瞑って、こくりと頷く。
 目を閉じていても、気配で達哉が近づいてくるのがわかる。
 どくん、どくん。心臓の音。
 その音が最大限に大きくなった時、達哉の重みが伝わってきた。



 エステルさん、すごく緊張しているみたいだな。
 隠そうとしているようだけど、ぎゅっと目を瞑って耐えているところが
すごく可愛らしくて。
 俺は、少しでもエステルさんを怖がらせないように、ゆっくりと身体を
下ろしていった。



「こ、これでいいのですか。ひざまくら、というものは」
「はい。とってもいい気持ちですよ」
「あ、ありがとうございます」
 俺がお願いしたこと。それは、『エステルさんにひざまくらをしてもらう』
だった。
 普段だったら絶対こんなことはしてくれないと思うので、今日だけの特別
サービスだ。
「そういえば、私も小さい頃にひざまくらをしていただいた記憶があります」
「モーリッツさんにですか?」
「はい。あの頃は自分がしてもらう側でしたが、こうやってひざまくらを
してあげる側になるなんて思ったこともありませんでした」
 エステルさんはやさしく微笑んで、俺の頭を撫でてくれた。
 それは無意識の行為なんだろう、でもだからこそ、エステルさんが
そうしてくれたことが嬉しかった。



「達哉、今日はどうもありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそお世話になりました」
 家を出て、エステルさんを見送る。いつもは一緒に礼拝堂まで送るんだが、
今日は俺の身体を気遣って、エステルさんはひとりで帰ることになった。
 頭のことは本当に大丈夫なんだけどな……。
「それでは、みなさん、失礼いたします」
 ぺこりと頭を下げて、エステルさんは踵を返した。
「また、来てくださいね。エステルさん!」
 菜月が声をかけると、エステルさんは振り向いてこう言った。
「はい。今度は達哉にひざまくらをしてもらいますから♪」
 ちょ、ちょっとエステルさん?
「お兄ちゃん、静かだと思ったらエステルさんにそんなこと……」
「達哉くん、いくらふたりっきりでも、そういうことはまだ早いのでは
ないかしら」
 麻衣と姉さんがあきれたように呟いた。
「ふふっ、どうやら、まめまきでエステルさんと達哉の仲はより深まった
ようね」
「こういうのを、地球のことわざで、『まめまいて、じかたまる』と
言うんだよ、ミアちゃん」
「わ~、そうなんですか~」
「いや、そんなことわざありませんから……」
 仁さんのセリフに、遠山が脱力した感じでツッコミをいれた。



はい、これにて終了です。
今日まで読んでいただいた方々、どうもありがとうございました。
近日中にまとめたものを作っておきますので、毎日日記をさかのぼるのが
面倒な方は、そちらをご覧ください。



あふぅ、これでやっと通常営業に戻れそうです(笑)。



それでは、明日もエステルマジカルがんばります。



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