2007/03/12

そして、あめはゆきへ



うあー、なんですか、この寒さは。
��月なのに雪ですよ。北国でもないのに。
今年の冬1番の寒さではないかと思うほどでしたわ。
仕事中、がたがたぶるぶるしておりましたもの(笑)。



「それではみなさんお待ちかねー。鬼のみなさんの登場デース。
大きな声で呼んでみましょう! せーのっ」
「「おにーちゃーんっ」」
 鷹見沢さんと麻衣さん、遠山さんの掛け声で現れたのは、鬼の格好に扮した
達哉と鷹見沢仁さんだった。
「あの、菜月さん。仁さんがかぶっているお面がすごく怖いのですが……」
 ミアさんが震える声で呟く。
「た、確かに。ちょっと兄さん。それはちょっとやりすぎじゃないの?」
「菜月ちゃん、あまいわ。仁くんがこの類のイベントにかける情熱は半端
じゃないの。それこそ、みんなを驚かせるためなら手段を選ばない人なのよ」
 穂積さんの解説に、みんなが神妙に頷いた。
「なるほど、たとえまめまきといえど、妥協を許さないその姿勢は、ある意味
尊敬に値しますね」
 と私が言うと、リースが呟いた。
「……ただ、楽しんでるだけ」
 リースの呟きに、私以外のみんなが頷いていた。



「じゃ、じゃあ気を取り直して、鬼をやっつけちゃいましょう!
まずはフィーナから」
 菜月さんの言葉に、みんなの視線がフィーナ様に集まる。
「一番槍、ということね。わかったわ菜月。先鋒を見事果たしてみせましょう。
ミア!」
「はい、姫さま!」
 ミアさんが豆を手渡すと、フィーナ様はゆっくりと豆をつかみ、達哉と
仁さんに向かって投げつけた。
 ざざっ
「よけた?」
 麻衣さんの驚愕の声。それもそのはず。フィーナ様が投げた豆はかなりの
スピードだったにも関わらず、鬼のふたりはよけたのだ。
「ふふっ、いかにフィーナちゃんがすぐれた運動神経を持っているとしても、
まめまきにおいては僕に一日の長がある!」
 仁さんが勝ち誇ったように言う。
「っていうか、なんでまめまきの鬼が豆をよけてるんですか……」
 遠山さんがあきれて呟いた。
「決まってるじゃないか。それは……」
「当たると痛いから、よね?」
「さすがさやちゃん。僕のことをよくわかってる」
「長い付き合いですもの♪」
 と言いながら、穂積さんはおもむろに豆を投げた。
「あいててっ! ずるいよ、さやちゃん!」
「あまいわね、仁くん。おしゃべりに気を取られているからよ。その証拠に、
達哉くんはふいをついた私の豆をちゃんとよけたわ」
「姉さんとは、長い付き合いだからね」
 にやり、と達哉が笑った。



 そこから先は、乱戦だった。
 初手を外したフィーナ様も気を取り直し、着実に鬼にダメージを与えていく。
 ミアさんはフィーナ様のサポート。菜月さんは愛用のしゃもじを
カモフラージュに使いながらの巧みな攻撃。麻衣さんはデスマーチを口ずさみ、
相手がひるんだところへの攻撃。
 みんな、自分の特長を生かした方法で、鬼を攻撃している。
「いや、これ、普通のまめまきじゃないから」
 遠山さんが呆然と遠く離れたところからみつめている。
「楽しければ、それでいいんじゃないかしら」
 にこにこと微笑みながら、穂積さんが言う。
「……」
 リースはひとり、豆を黙々と食べていた。
 そして、激戦のうちに仁さんが倒れ、他のみんなの残弾もつき、達哉と
私だけが残った。
「エステルさん! あとは達哉だけです。一気に決めちゃってください」
 菜月さんの声を背に受けた私は、右手のものを握り締め、おおきく
ふりかぶって、投げた。
「おには……そとっ!!」
 かこーん、という音が響き、達哉が崩れ落ちた。
「わああっ、達哉がー」
「おにーちゃーん!」
 菜月さんと麻衣さんの叫びも、どこか遠くから聞こえる。
「勝利とは、こんなにもむなしいものなのですね……」
 たたずむ私に、フィーナ様がゆっくりと歩み寄り、ささやいた。
「エステルさん、まめまきは、枡ごと豆を投げてはいけないのですよ」
「……え?」
 達哉は、私が投げた枡を頭に受けて、目をまわしていた。



よしっ、今日はここまで。



それでは、明日もエステルマジカルがんばります。



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