2007/07/08

「秘めたる想いをキャンバスに」2回目(Canvas2)(竹内 麻巳)



 翌日。珍しく、美術室には美術部の生徒と顧問が揃っていた。
「撫子七夕祭?」
「ああ、校庭にもすでに笹が飾ってあるだろ。7月7日の当日には出店もたくさん
出て、にぎやかな祭りになるんだ」
 エリスの問いに浩樹が答える。
「それに、あの笹に願い事を書いた短冊を吊るすとよく叶うと言われているのよ」
「そうなんですか~」
 麻巳の説明に、興味深そうに笹を眺めるエリス。
「ですが先生」
「どうした竹内」
「この山のようなキャンバスは、一体全体どうしたんでしょうか?」
 見渡せば、美術室内には山と積まれた真っ白なキャンバスがそこかしこにある。
 麻巳の問いかけに浩樹はにやりと笑う。
「お前たちは美術部だ。だから、笹に願い事を書いた短冊を吊るすのではなく、
キャンバスに願い事を絵として描くんだ」
 浩樹の宣言には、美術部員全員を驚ろかす効果があった。
 でも、エリスの「おもしろそう~」という言葉をきっかけに、部員の気持ちは
あっという間に盛り上がり、七夕祭に向けて、それぞれの想いをキャンバスに
描き始めていく。
 しかし、皆が盛り上がる中、麻巳はひとり寂しげな微笑を浮かべて、真っ白な
キャンバスを眺めていた……。



つづく



小出しにするのは申し訳ないと思っておりますが、もう少しだけ
お付き合いくださいませ。
なるべく早く続きが書けるようにしますので~。



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