2007/08/03

(ぷちSS)「とおりまい」(夜明け前より瑠璃色な)(朝霧 麻衣)






「おはようございま~す」
「おは……」
 妹の麻衣の挨拶に返事をしようとした達哉は、麻衣の格好を見て言葉を
失った。
「おは? 何それ、朝の挨拶の省略?」
「いや、そうじゃない。なあ麻衣。その格好はなんだ」
「変かな?」
 麻衣はくるっとまわってみせる。すると、白い小袖に、目にも鮮やかな緋袴が
踊る。
「いや、よく似合ってるよ。……って、違う!」
「似合ってないんだ……」
 しょんぼりとする麻衣。
「ちょ、俺が違うって言ったのはそういう意味じゃなくて。どうして巫女服を
着ているのかってことだよ」
「それはもちろん、舞を踊るためだよ」
 なにがもちろんなのか、さっぱりわからない。
 首をかしげる達哉に、しかたないなあと呟いた麻衣は、おもむろに目を瞑った。
 そして、次に目を開けたとき、麻衣のまわりの空気は一変していた。



「しかたないですわね。それでは、お兄様に教えて差し上げましょう」
「え?」
「わたくしの名前は麻衣。ゆえに舞。麻衣が舞を踊るのに、何の理由が必要と
言うのでしょう」
「いや、別に構わないけどさ……」
「もし理由が必要と言うのなら、あえて申し上げましょう。わたくしが
『透明の巫女』だからだ、と」
「透明の……なんだって?」
「透明の巫女が舞を舞う。ゆえに、それは『透舞』」
 達哉の声が聞こえているのかいないのか。麻衣はふところからフルートを
取り出すと、いつも練習している曲を奏でながら、足を運ぶ。
 それは、時に激しく、時にゆるやかに、変幻自在に変わる曲調とともに、
麻衣の動きも変わっていき、いつしか達哉は麻衣の舞いに釘付けになっていった。
 永遠のように長い時間とも、あっという間の出来事とも判断がつかなかったが、
いつの間にか麻衣の舞いは終わっていた。
 そして、麻衣の目が開かれると、先ほどまでの神妙な空気は彼方へ、いつもの
麻衣がそこに立っていた。



「あれ、お兄ちゃん?」
「麻衣、麻衣だよな!」
「そうだけど」
「よかった、いつもどおりの麻衣だ」
 変なおにいちゃん、と笑う麻衣は、確かにいつもの麻衣だった。
 いつもと違うのは、巫女服を着ているということだけ。
「変でも何でもいいさ。でも、普段とは違う麻衣を見られてちょっと
得した気分だよ。『透舞』に感謝だな」
「よ、呼び捨てにしないでくださいます!?」
「へ?」
「うん? どうしたの、お兄ちゃん」
 いつもどおりの、麻衣だよな?









おわり?



いいわけ(あとがきともいう)
時間がなかったから、思いつくまま書いたんですが、自分でも何がなんだか
わかりません。
元ネタがあっても、SSが書けるわけではないという例でした。



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