2007/09/30
(ぷちSS)「去年とは一味違う夏」
今回はブタベストさんの9/16付けの文章の「去年とは一味違う夏」の続きに
なります。
ブタベストさんの文章を読んでから、こちらをご覧ください。
「ところで、プールっていうのは、町内にひとつだけのあのプールのことか」
どこの町にもプールのひとつやふたつはあるだろう、もちろん俺たちの
住んでいるこの町にもある。
ただし、この町のプールはかなり立地的によろしくなく、行くのが大変
なのだ。
「今からだと、着いたころには3時は過ぎてるから、あまり泳いでる時間
なさそうだが」
と言ったら、前を歩くあいつが振り向いて、ニンマリと笑った。
「だ~いじょうぶっ。だって、行くのはすぐそこだよ?」
指をさす方向を見ると、そこにあるのはうちの学園のプールだ。
「水泳部は、今日は部活お休みなんだって。だから、先生に頼んだら
オッケーもらえたんだ~」
いいのか、おい。おおらかな学園だとは思っていたけど、自由すぎるのも
問題ではなかろうか。
「ほら、更衣室と入り口のカギもばっちり。それから、一緒に行くのがキミ
だって言ったら、こんなのもくれたよ」
スカートのポケットから、鍵束と小さな箱を取り出して、箱のほうを俺に
放り投げた。
「ナイスキャッチ☆」
「おう、って、これは……」
その箱には、『あかるい家族計画』と言う文字が、やたらPOPな書体で
書かれていた。
だから、おおらかすぎやしないかっ!?
「もう、困っちゃうよね~、先生にも。そんなの必要ないのに~」
「あ、ああ。そうだよな」
必要ないのは、俺が安全だと思われているからだろうか。それはそれで
嬉しいんだが、少しは心配、というか意識してもらえると助かるんだが。
俺だって、ほら、オトコだしさ。
「だって……今日は『オッケー』な日だもん♪」
……なんですと?
そんなわけで、俺はプールにいる。正確にはプールサイドに。とっくに
着替えは済ませ、後はあいつが出てくるのを待つだけだ。
先にプールに入っててもいいんだが、なんとなく待たなきゃいけない
ような気が。
誰もいない学園のプールは、広々としていて、静かで、不思議な空間だ。
空は青く、ところどころ白い雲が浮かんでいて、裏山の森からセミの声と、
少し離れたグラウンドからは運動系の部活の声が聞こえてくる。
あまりにものどかなので、ごろりと横になる。
あー、早く来てくれないといろいろ想像してしまいそうなんだが。
だって、5センチって。
去年どれくらいだったかなんて、数字聞いたわけじゃないからわからないが、
少なくともぺたんこではなかった。
ということは、だ。プラス5センチというのは、かなりの成長率である
わけで、見たいと思ってしまった俺は正常……だよな?
というとこまで思考が旅立ったところで、天空から水が降ってきた。
「うわあっ」
即座に跳ね起きると、あいつがプール脇に座っていて、俺に向かって水を
かけていた。
「ふっふっふ。えっちなこと考えてる頭を冷やしてあげるよ。それそれっ」
くっ、先手を取られた。
俺も負けじと水をかけ返す。
「そりゃっ」
ばしゃっ。
「ていていっ」
ぱしゃぱしゃっ。
「どりゃっ」
ばしゃあっ。
「きゃあっ☆」
お互い、プールに入る前からびしょぬれになっていた。
あいつは、Tシャツがぐっしょりで、中の水着が透けるほどだ。……え?
「あ、なんか視線を感じる。えっちー」
と言って、胸元を隠すあいつ。
「あの、質問してもいいか?」
「いいよ♪」
「どうして、水着の上にTシャツを着ているのでしょうか?」
なんで丁寧語になっているんだ、俺は。
そんな俺がおかしいのか、あいつはにこやかに言い放った。
「だって、そのほうがドキドキするでしょ♪」
「なっ…」
思わず俺の視線が目の前の少女の特定の部分に行ってしまったことは否定
しようが無い。
ニンマリとするこいつの笑顔。
激しく後悔するが、後の祭りだ。…俺の馬鹿。
「えへへっ。脱いでほしかったら、わたしをつかまえてみなさいなっ」
プールに入り、手を叩くあいつ。
ようし、そっちがその気なら、絶対に拝ませてもらうからな、水着姿。
俺はやっぱりヤケクソになっている。でも、悪い気分じゃないのも事実で。
俺は息をいっぱいに吸い込んで、プールに飛び込んだ。
はい、ここまでっ(えー
すみません。タイムアウトです。
続きは、気が向いたら来週以降にでも書くかもしれません。
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