2008/07/17
(ぷちSS)「風呂か食事か」(FORTUNE ARTERIAL)(悠木 陽菜)
梅雨も明けたので、毎日の傘から解放されたと思ったのに、突然の
夕立に天を恨みながら、全速力で帰ってきた。
「おかえりなさーい、こーへー♪」
部屋の扉を開けると、見慣れた顔がにこにこ微笑んでいる。
かなでさんだ。
「わ、孝平くん、びしょ濡れだよ?」
陽菜もいるのか。
どうでもいいけど、どうして俺が留守なのにこの姉妹は俺の部屋に
入れるのだろう。
「はいはい、タオルタオル」
陽菜からタオルを受け取ったかなでさんは、俺をがしがし拭いてくれた。
「ありがとうございます」
「いえいえ、どういたしまして♪」
太陽のような笑顔のかなでさん。
「ほら、お姉ちゃん、孝平くんの頭も拭いてあげないとダメでしょ」
陽菜はしょうがないなあと、かなでさんからタオルを受け取ると、俺の頭を
ごしごし拭いてくれた。
「ありがとうな、陽菜」
「うん♪」
「さて、それでは準備も整ったところで、こーへー」
「なんですか」
「お風呂にする? それとも、わ・た・し?」
「お風呂ですね」
「……うわーん、こーへーにすてられたー!」
俺が即答すると、かなでさんは竜巻のように部屋を出て行った。
なんだか、ずいぶん人聞きの悪いセリフを叫びながら。
「孝平くん。あまりお姉ちゃんをいじめちゃダメだよ」
「そんなつもりはないんだけど。もしかなでさんって答えてたら?」
「私が怒ります♪」
どっちにしても、ひどい選択肢だった。
「じゃあ、陽菜だったらどうしてくれるんだ?」
「え? わ、私」
俺の問いに、顔を赤くする陽菜。
「あ、あの、お風呂にする?」
「いや」
「じゃ、じゃあお食事かな?」
「いいや」
「……、……」
「続き、聞きたいんだけど」
「そ、それとも、わ」
俺は陽菜のセリフを最後まで言わせなかった。
「も、もう、ダメだよ、孝平くん。せっかちさんなんだから」
たっぷりくちづけをした後で、陽菜が文句を言った。
「ごめん、そうだよな。物事には順序があるよな」
そう言うと、俺はシャツを脱ぎ捨てた。
「こここ、孝平くん?」
「まずはお風呂から、だろ? さあ、陽菜も早く脱いで」
「え? え?」
困惑しながらも、俺にせかされるままに服を脱ぎ始める陽菜だった。
おわり
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