2008/08/22

(ぷちSS)「壁に耳あり、障子に目あり -とある生徒(いおり)の戯言目録(インデックス)-」(FORTUNE ARTERIAL)



「壁に耳あり、障子に目あり、ってことわざ、あるよね。
俺は床に耳あり、天井に目あり、でもいいと思うんだけど、
支倉君はどうだい?」
 夏休みのとある一日の昼下がり。
 セミの声をBGMに生徒会の仕事をこなしていた孝平に、伊織が
話しかけてきた。
「そうですね……。俺はどっちでもいいです」
 書類に目を通しながら、答える孝平。
「釣れないなあ、支倉君は。じゃあ、瑛里華はどう思う?」
「釣る気なの? 私もどっちだっていいわよ。っていうか
ちゃんと仕事しなさいよね」
 あきれ顔で適当に返事をする瑛里華。
「もちろん、ちゃんと仕事はやっているさ。見なよ、この俺が
片付けた書類の山を」
 伊織の机の上には、処理済の書類が山になっていた。
「わぁ、すごいです。さすがは伊織先輩ですね」
 白が感心し、
「いつもやっていれば、そもそも山になることはないのだが」
 と征一郎が言った。
「まあ、そう言うなよ、征。ところで、未解決の問題があるんだ。
それで、支倉君に意見を聞きたかったんだよ」
「俺に、ですか?」
 孝平が顔をあげて伊織を見る。
「実はね、とある生徒(悠木姉)からの陳情(タレコミ)なんだが、最近夜な夜な
階下から奇妙な声が聞こえて来るそうだ」
 声をひそめて話し出す伊織。
「階下から奇妙な声……ですか」
 首を傾げながら呟く孝平。
「ああ。しんじゃう~、とか、おかしくなっちゃう~とか言ってる
らしい。何か、心当たりはないかい?」
 これは、もしや。……聞こえていたのでは。
 ふと、瑛里華のほうを見ると、顔を真っ赤にして、ぷるぷると
震えていた。
 孝平と瑛里華は二人同時に
「「すみませんでした。以後、気をつけます」」
 と、頭を下げた。
「そうしてくれると、俺としても助かるよ。ところで、二人とも。
床に耳あり、天井に目あり、ってことわざは、どう思う?」
 にやにやと笑いながら、伊織は言った。



0 件のコメント:

コメントを投稿