「ねえ、こーへー。横綱
おもしろいと思わない?」
初秋のとある夜の談話室。
もうすぐはじまるドラマ、「横綱刑事」を楽しみに待っているかなでが
孝平に話しかけてきた。
「はあ、めちゃくちゃ長そうなシリーズになりそうですが」
かなでの隣に座ったまま、おざなりに答える孝平。
「だってさ、序ノ口はまだまだ新米だから、犯人にも負けちゃったり
するんだよ。でも、最後まであきらめないところが燃えたりすると思うんだ~」
かなではおやつをぱくぱくと食べながら言う。
「そうかもしれませんね」
「でしょでしょ♪」
にこにこと笑いながら、かなではぱくぱくとおやつを食べる。
「でも、きっとその刑事が横綱になるよりも、かなでさんが横綱になるほうが
早いんじゃないかと思いますけど」
かなでのお腹をちらりと見て、孝平が言った。
ガーン!
という効果音を出して、かなではうな垂れた。
「どうしたんですか、かなでさん。顔が真っ青ですよ」
「……こーへーに、言葉の暴力で殺されたんだよ……」
随分と人聞きの悪い事を言われている気がする。
どうしたものかと孝平が思っていると、突然かなでが立ち上がった。
「よーし、こうなったらダイエット大作戦しかないかな。いくよ、こーへー。
まずは寮内ランニングから」
かなでは孝平の腕をつかんで、元気よく走り出した。
「って、俺もですかー?」
「あったりまえだよ。わたしを殺した責任、とってもらうからね~」
嬉しそうに言うかなで。
孝平は、
「(かなでさんがもし横綱になっても、俺はずっとそばにいるんだけどな)」
と思いながら、かなでに連れられたまま走り出した。
おわり
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