2009/07/08

(ぷちSS)「七夕とポニーテール」(舞阪 美咲)



「今日はポニーテールだねっ、雄一♪」
 朝のあいさつもまだなのに、いきなり意味不明のことを言われたが、相手が美咲なので
何も考えずに「そうだな」と言った。
「うわ、雄一すごいね。今日が『ポニーテールの日』だって知ってたんだ」
 オーバーなリアクションを取る美咲の髪型は、ポニーテールであり、一年三百六十五日
この髪型で過ごしている。
「いや、今はじめて知ったけど。つか、そんな日があるのか」
「うんっ! 七夕の織姫さまっているでしょ。そのひとがポニーテールだったらしいんだ
よね。だから、七月七日はポニーテールの日なんだって」
 すごい理由だな。しかし美咲はなんでそんなことを知っているんだろう。
「お姉ちゃんが教えてくれたのっ」
 うれしそうにまわる美咲。スカートとポニーテールがひらりと舞い上がった。
「……今日は眩しいなあ」
 純白のアレが見えたことを気づかれないように、白々しく太陽を見上げながら呟く俺に、
「今日はいいお天気だもんねっ♪」
 とご機嫌な美咲だった。



「ねえねえ、雄一は何か願い事あるの?」
「願い事?」
「うん。私のおっぱいはおっきくなったのかなーとか?」
 それは願い事とは言わない。
「うーん、すぐに思いつくものはないなあ」
 バスケの大会はもうしばらく先だし、欲しかった服はこないだ買ったばかりだからな。
「美咲は何か願い事あるのか?」
 俺がそう言うと、にんまりと笑った。
「えへへ~、聞きたい? 聞きたい? どうしてもって言うなら教えてあげてもいいよ♪」
 こんなに笑顔な美咲をスルーしたら、後が大変なことは長い付き合いなのでイヤという
ほどわかっている。
「わかったわかった。教えてください、どうしても知りたいんだー」
 あまりにも棒読みだったが、そんなことは美咲には関係なく。
「しょうがない、教えてあげましょう~」
 大きな胸を張って、美咲は願い事を言った。



『新しい水着を雄一に買ってもらうこと♪』



 ……往来の真ん中でとんでもないことを口にしやがったな、このヤロウ。
「こないだねー、すっごい珍しい水着を発見したんだよ。なんとね、真っ赤なスクール水着
なの! これは、流行に敏感な美咲ちゃんとしては見逃せない逸品だよ~」
 どこで売ってんだよ、そんなの。
「つか、去年も水着買っただろ? わざわざ新しいものを買わなくても……」



「だって、サイズがおおきくなっちゃったから♪」



 な、なんですとっ?
 思わずその部位に目が吸い寄せられる俺。
「当社比120パーセント☆」
 にこやかにブイサインを決める美咲。
 どうやら、今年の夏も、織姫さまのコイツと楽しく過ごすことになりそうだった。



おわり



0 件のコメント:

コメントを投稿