2009/08/03

(ぷちSS)「15日目 スコップを持って」(舞阪 美咲)



 先週まで、正確には昨日までどちらかと言えば雨寄りの天気だったのだが、今日はそん
なことあったっけ、と思えるぐらいの晴天だった。
 ちょっと寝不足ながらも、きちんと午前中の部活はこなした。
 昼飯を食べて少し昼寝したおかげで、体調は完全回復。
「若いっていいよね」
 なぜか美咲も機嫌よく笑っていた。
 それじゃ、そろそろ行くか。
 俺たちは、園芸部の花壇へ向かった。



「美咲ちゃん、雄一君。今日はどうもありがとう」
 ぺこりと頭をさげるグッさん。服装は学校指定のジャージに麦わら帽子だが、妙に似合っ
ていた。
「香奈ちゃん、今日はひとりなの。だから、わたしたちでお手伝いしようと思って」
 と美咲が言うので、俺たちは園芸部の手伝いをすることにした。
「俺、園芸のことは詳しくないから、グッさんがいろいろ指示してくれよ。力仕事なら何
でも言ってくれていいからさ」
「そうだよ。今日は香奈ちゃんに雄一のコキ使い権を貸してあげる♪」
 勝手に貸し出されても困るんだが。つーか、そんな権利を渡した覚えも売った覚えもな
いけどな。



「それじゃ、雄一君には花壇の整備をお願いします。最近、雨が降ることが多かったでしょ
う。土がこぼれたり、レンガが崩れたりしてるところがあるの」
「オッケー、じゃレンガを直して、土を整えればいいんだな?」
「うん。新しい土が必要だったら、倉庫に少しあるから言ってね?」
 そう言うと、グッさんは美咲のところに小走りで駆けて行った。



 なんというか、地味な作業ではあるんだけど、少しずつ形になっていくのが嬉しいよな。
 俺には園芸の趣味なんてなかったんだけど、こうやって実際にやってみると、意外に楽
しいことがわかる。
 よく、ひとり暮らしの人がペットを飼ったり、植物を育てているっていうけど、少しず
つ成長していくのが楽しいんだろうな。



「雄一君。ちょっと休憩にしよ?」
 グッさんが言うので、俺はスコップを下ろした。
「うわあ、かなり進んだね。すごいなあ」
「そうかな? 自分ではなかなか終わらない気分になってきたんだけど」
「そんなことないよ。私ひとりだったら、まだ全然だと思う」
 グッさんが渡してくれたお茶を、一気に俺は飲み干した。
「さっすが男の子だね♪」
 いや、お茶一気飲みぐらいで。
「そういや、美咲は?」
 キョロキョロとまわりをみても、美咲はいない。
「美咲ちゃんには、お花屋さんに行ってもらってるの」
 ま、あいつにちまちました作業は合わないからな。
「うふふ、やっぱり美咲ちゃんがいないと心配かな?」
 グッさんが笑いながらそう言った。
「まあね、あいつは何をしでかすかわからないからさ」
「そういうことにしておこうね」
 グッさんは楽しそうにそう言った。



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