2009/08/10

(ぷちSS)「22日目 それは誤解だから」(舞阪 美咲)



 ぶふぉっ!
「きゃあっ? もう、ダメでしょ、雄一~」
 ぷりぷりと怒るのは、俺の前に座っていた美咲だ。
 旅行2日目の朝食の時間。俺たち4人はいつものように談笑しながら食事を取っていた
のだけど、美咲が発した言葉を聞いた俺は、思わず吹き出してしまったのだ。
「げほげほっ……、わ、悪い。けどな、今のを聞いて吹き出さないやつはいないぞ。なあ、
弘明」
「……確かにな。お前らがそういう関係だとは知っていたつもりだったが、あらためて聞
かされるとびっくりせざるをえない。なあ、グッさんもそうだろ」
「……う、うん。でも、今のは美咲ちゃんがよくないと思う」
「えー」
 えーじゃない。



「別にそんなにおかしなことじゃないでしょ。『わたしの胸がおっきくなったのは、雄一
に揉まれたせいってことにして』って言っただけじゃない」



 美咲が言うには、昨日のお風呂での出来事らしい。
 グッさんと旅館の大浴場に入っていると、明子ちゃんが入ってきたので、一緒に背中を
流し合ったらしい。
 それ自体は仲良くなった証拠なのでいいんだが、問題はその後だ。
「うわ、なに、美咲ちゃん。このすごいおっぱいは!」
「え?」
「え? じゃないでしょ。普通の高校生はこんなに立派なおっぱいをしていないものよ」
「そうかなあ」
「そうなの! 私なんて、こんなに慎ましい胸だと言うのに……くすん」
 明子ちゃんは涙を流したらしい。
 思い出してみると、確かに明子ちゃんはどちらかと言えばスレンダーなタイプだったが、
残念ながら着やせするタイプではなかったようだ。
「香奈ちゃんも結構立派だね」
「そ、そんなことないと思うけど……」
 じとーと見つめる明子ちゃんの視線が痛かったと、グッさんは語った。
「やっぱり、男の人に揉まれると大きくなるのかな」
「さ、さあ?」
「あ、目が泳いでるよ、美咲ちゃん。さては、いっつもこんなふうに揉まれてるんでしょ!」
「ふぁっ!? ちょ、ちょっとダメだってアキちゃん……うぁん」
「むむー、ますますこの弾力が羨ましいわ! 相手は誰なの? まさかヒロってことはな
いだろうから、雄一くんね? すっごく仲良さそうだし。ね、ね、そうなんでしょ?」
 ぐにぐにと美咲の胸を揉みながら迫る明子ちゃんに、美咲はついに首を縦に振ったのだ
そうだ。



「だからね、アキちゃんに聞かれたら、そう言ってあげて欲しいの」
 ……まあ、それで明子ちゃんが納得するなら……って、んなこと言えるか!
「すまんな、舞阪。アキには俺から言っておくよ。グッさんも悪かった。悪気はないんだ
けど、どうも胸のことになるとあいつは目の色を変えちまうからな」
 弘明が美咲とグッさんに頭を下げた。
「ううん、別に怒ってるわけじゃないから、弘明くんは気にしなくていいよ」
「そうだよ。まだあまり話してないけど、明子ちゃんはとってもいい子だって思うよ」
「ふたりにそう言ってもらえると、助かるよ」
 ようやく弘明は顔を上げた。



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