2009/08/12

(ぷちSS)「23日目 山に登ろう」(舞阪 美咲)



 旅館『高月』の裏山は、ハイキングにもってこいだと言うのは明子ちゃんの言葉だった。
「私たちにとっては朝ごはん前の散歩コースなんだけど、みんなにとってはどうかな」
「ふっふっふ。それはわたしたちへの挑戦ってことでいいんだよね、アキちゃん?」
 美咲のその声で、俺たちがハイキングに行くことが強制的に決まった。
 付き合わされるほうの身にはならないんだろうかね。
 ま、俺はいつものことなので驚きもしないが。
「あれ、雄一くん。やけに落ち着いてるね。もしかして、山登りとか経験豊富なの?」
「いいや。ロクに行った事がないけど」
「じゃあ、なんで」
 不思議そうな表情の明子ちゃん。
「美咲だけなら不安だけど、グッさんも弘明もいるし、大丈夫だろ。一応、俺も行くしね」
「おおっ、さすがカレシは言うことが違うね~。まあ、危険な山じゃないから、その点は
気楽に楽しんできてよ」
 だから、カレシじゃないっての……。



 お弁当を作ってもらって、山登り用のアイテムを持って、準備は万端。
「それじゃあ、出発するか。俺が先頭で、次が舞阪。グッさんが3番手で、殿が雄一だ。
俺は登ったことがあるから、あえて感想は言わないけど、ゆっくり歩いてりゃ大丈夫だか
らな」
 弘明の言葉を聞いて、俺たちは頷きあう。
「がんばろうね、みんな」
「うん! 雄一、遅れないでついて来るように」
「はいはい、わかったよ」
「はいはYESでしょ、雄一」
 英語にする必要はどこにもなかった。



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