2009/08/02
(ぷちSS)「14日目 遊びと勉強の両立」(舞阪 美咲)
ニュースでは、今年の梅雨明け宣言は出ないかもしれませんと言われているが、たとえ
梅雨が終わらなくても、夏休みが終わらないわけじゃない。最終日に地獄を見ないために
も、計画的に宿題をこなしておく必要があった。
「雄一~、夏休みなんだから遊びに行こうよ~」
美咲が俺のベッドに寝転んでぶーぶー文句を言っているが、俺は今日はきちんと宿題を
やると決めている。
「俺だって遊びたいけど、ちゃんと宿題をやっておかないとダメだろ。美咲も、まだ宿題
残ってるんだろ」
「ふふん♪」
自慢げに胸をそらす美咲。寝転んだまま器用なことだ。
「もしかして、もう終わったとか?」
「あのね、雄一。夏休みの宿題ってのは、提出日に終わっていればいいんだよ」
そりゃそうなんだが、こいつの言うことを鵜呑みにしたら大変なことになる。
そう思った俺は、黙々と宿題を進めることにした。
「むむー、美咲ちゃんをほおっておくと、すごいことになっちゃうんだからね」
なぜ、宿題をしているのに脅されなければならないんだ……。
とはいえ、権力(?)に屈するわけにはいかない。
俺はそうっと携帯電話を操作すると、勉強に戻った。
美咲はごろごろと寝転びながらマンガなど読んでいるようだが、どうやら積極的に俺の
邪魔をするつもりはないらしい。
どうせなら勉強すりゃいいのになあ。と思ったが、余計なことを言って機嫌を損ねても
つまらないから、俺は黙って宿題をしていた。
そのうち、飽きてきたのか美咲は部屋をうろうろし始めた。
「なんだか暑くなってきたな……」
ぱたぱたという音が後ろから聞こえる。
「……脱いじゃおうかな」
……! いやいや、それはないよな?
「雄一、こっち見ちゃダメだよ~」
「お、おう」
見ちゃダメと言われると、見たくなるのが人の常である。
しゅるり、しゅるりという音が確かに聞こえる。まさか、本当に脱いでいるのか?
いやいや、さすがの美咲と言えど、そんなことはしない……よな。……でも、美咲だぞ。
ごくり。俺は思わず唾を飲み込んだ。いつのまにか喉がカラカラになっている。
どうしよう……と思った時、コンコンとノックの音が聞こえた。
ちょ、今はマズイって!
「はーい、どうぞ~」
それなのに、美咲が返事をしやがった。だから、ここは俺の部屋だっての!
「お邪魔します。雄くん、お茶でもいかがかしら? それとね美咲ちゃん、ちょっと手伝っ
てほしいことがあるんだけど、うちまで来てくれない?」
「うん。いいよ、お姉ちゃん♪」
へ?
俺が振り向くと、美咲はちゃんとTシャツを着ていた。あれ、確かに脱いでいる音が聞こ
えていたんだけど。
美咲はすぐに立ち上がると、部屋を出て行った。麻美さんは俺にウィンクすると、美咲の
後を追った。
実は、麻美さんを呼んだのは俺だった。勉強の邪魔をされても困るので、適当なところで
美咲を連れて行って欲しいとメールを送ったのだ。
だから、麻美さんが来たのは俺の予定通りなんだけど……。
ま、いいか。これで落ち着いて勉強ができるな。
と、俺は思ったのだが、ある物が目に入って、それはかなわないことになった。
どう見ても、女物の下着の上だけが、そっとたたまれて俺の後ろに置いてあったのだ。
美咲のものに間違いないと思う。が、どうすりゃいいんだよっ!
勝手にどけておくわけにもいかないし、そのままにしておくわけにもいかない。
悶々とする気持ちを抱えて、俺は捗らない宿題を前にして苦悩するのだった。
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