2009/08/21

(ぷちSS)「33日目 早さを大切に」(舞阪 美咲)



「おはよう、美咲」
「おっはよう、雄一☆ 今日も早いね♪」
「お、おう」
 雄一はなぜか複雑な表情を浮かべていました。
「どうかした?」
「いや、早いって言われると、オトコとして微妙な気持ちになってな……」
 ??
「なんでなんで? 早起きはいいことだと思うんだけど。ねえ、お姉ちゃん」
 見送りに出てきてくれた麻美お姉ちゃんに聞くと、お姉ちゃんは微笑んでくれました。
「ええ。雄くんが早いのは、とってもいいことだと思うわ。だから、これからも続けられ
るようにがんばってね♪」
「は、はあ。がんばります」
 やっぱり、雄一は複雑な表情のままでした。



 学校に着くと、今日はわたしたちが一番乗りでした。
「いっちば~ん。それじゃあ、みんなが来るまでにモップがけをしちゃおっかな」
「俺も手伝うよ」
「うん! 一緒にやろ」
 用具室にあるモップを出して、ふたりで体育館の端から端までモップがけです。
「とぉ~りゃぁ~~~」
 わたしは掛け声と共にダッシュします。
「なんだそりゃ」
「これはね、掃除の時の掛け声なんだよ。こうやって叫ぶのが、日本の掃除の正しいやり
方だって、昔テレビでやってたもん」
「いや、そりゃアニメの話だからな」
 アニメだろうとなんだろうと、楽しければいいんだとわたしは思います。
 結局、雄一が体育館の床の3分の2ぐらいをモップがけしてくれました。
「ありがとう、雄一。やっぱり早いね~」
「ま、まあな」
 雄一はなぜか複雑な表情を浮かべていました。



「お、今日はお前たちが一番か。早いな」
「あ、平田先生。おはようございます!」
「おはよう。今日も暑くなりそうだから、夏バテには気をつけろよ。休憩のタイミングは
舞阪に任せてるから、しっかりな」
「は~い」
 練習中のタイムキーパーは、美人有能マネージャーのわたしの役目です。練習メニュー
も日によって違うので、結構重要な仕事だったりします。



「お疲れ様、雄一」
「おう、美咲もお疲れ様。いつもサンキューな」
 タオルを渡すと、雄一がお礼を言ってくれました。
「やりたくてやってることだもん。がんばってるみんなのお手伝いをするのが、マネージャ
ーの勤めですから」
 澄まして言うと、雄一が笑いました。
「も~、何かおかしいの?」
「おかしいよ。美咲はからかうとすごくおもしろい」
「あ~、そんなこと言う雄一には、今日のお昼はあげません」
「ちょ、それはずるいぞ」
「ずるくないもーん」
 わたしは走って逃げましたが、すぐに雄一に捕まえられてしまいました。
「やっぱり、雄一は早いね♪」
「まあな♪」
 雄一は、やっとにっこり笑ってくれました。



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