2009/08/23

(ぷちSS)「35日目 時にはだらけて」(舞阪 美咲)



 この夏の風物詩と言ってもいいだろう、朝からの蝉時雨も少し小さくなってきたような
気がする。
「もうそろそろ夏も終わりなのかなあ」
 縁側で美咲がアイスキャンデーを舐めながらそんなことを呟いた。
「何言ってんだよ、美咲らしくない。夏はそんなに簡単に終わらないよ」
 俺は、扇風機の風を受けながら答えを返す。
「雄一……」
「まあ、俺の宿題もなかなか終わらないからな」
 もちろんやってはいるし進んではいるんだが、なんでこう、牛さんの歩行スピードみた
いな感じなんだろうね?
「やれやれ、どきっとしたわたしのときめきなメモリアルを返して欲しいよ、もぅ」
 借りた覚えがないので返しようもないのだが。
「ところで美咲。そのアイス」
「あ、雄一も食べる? 取ってきてあげよっか」
「ああサンキュ……って、チョイ待て。そりゃ昨日俺が買ってきたもんだろ」
 残り少なくなった夏のこづかいの中から、貴重な英世さんを切り崩してまで買って来た
というのに。
「雄一。細かいことを気にしてると、胸は大きくならないよ?」
 そんな必要はまるで俺にはないんだけどな。
「もぅ、わがままだなあ~。それじゃ返すよ、はい♪」
 美咲は持っていたアイスキャンデーを俺の口に突っ込んだ。
「んぐぅっ?」
「おいしいでしょ」
 美咲はにっこりと微笑んだ。



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