2009/08/28

(ぷちSS)「40日目 2日前にできること」(舞阪 美咲)



「ようし、これが最後の練習だ。各自シューティング50本。ショート、ミドル、ロング
レンジの3種類だ。やりたいやつは、超ロングレンジも10本だけ許可する。はじめ!」
 俺たちはひたすらシュートを打ち続ける。入ろうが入るまいが、関係なく50本。適当
に流したいやつにはラクな練習だが、そんなやつはいやしない。1本1本全力で、尚且つ
集中を切らさず、誰よりも高い成功率を目指して、俺たちは打ち続けた。



 最後の最後、ひたすら外しまくった超ロングレンジのシュートだが、
「雄一、いっけえ!」
 という美咲の声とともに放ったシュートは、長い滞空時間とゴールネットが奏でるきれ
いな音を俺たちの耳に届けてくれた。
「ほほう、やるじゃないか笹塚。試合でもラストのシュートはお前にかかってるぞ。いや、
舞阪にかかってるのかもな」
 わっはっはと豪快に笑う先生につられて、俺たちは笑った。これで、長かった夏休みの
練習も終わりだからだ。
「明日は休養日だから、ゆっくり休んで、明後日の正午に集合だ。試合開始は2時だが、
お前たちはホストだから、相手を迎える準備をしなくちゃならないからな。と言っても、
せいぜい椅子を並べるぐらいだがな」
 言いながら、先生は俺たちの身体に順番に触っていく。最初はスキンシップの多い先生
だなと思っていたけど、実は身体におかしなところがないかチェックしているらしいとい
うことに気づいたのは数日前だったりする。
「それじゃあ解散。気をつけて帰るように」
 先生は言いたいことだけ言うと、さっさと帰っていった。



「う~ん、あっという間だったなあ」
 お盆休みが明けてから、先生の指導による練習になって、明後日にはもう試合だ。
「夏休みもあっという間だったね~」
 お盆休みこそ旅行に出かけていたけど、それ以外は練習と宿題の繰り返しだったような
気がする。
「でも、楽しかったよね♪」
 ポニーテールを弾ませながら、美咲が笑う。
 そう。楽しかったのだ。単調な毎日かもしれないけど、一日として同じ日はなくて。
 しいて言うなら、毎日が単調で、それでも特別な日だった。夏休みとは不思議な日の集
まりでできているのかもしれないな。



「でもね、まだまだ楽しいことは待ってるよ♪」



 そう言って、美咲は俺の手を取って駆け出した。
「明日はお休みだけど、今日はまだまだこれからだもん。夕ご飯まではいっぱい遊ぼうね」
 どうやら、練習の締めは美咲に付き合うことらしい。
「それじゃ、弘明とグッさんも呼んでみるか?」
「うん、そうしよそうしよ!」
 楽しいことは、みんなで共有しなくちゃもったいないからな。



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