2009/08/03

(ぷちSS)「達哉と麻衣のとりとめのない日常」(夜明け前より瑠璃色な)(朝霧 麻衣)



 八月の最初の月曜の午後。朝霧達哉と朝霧麻衣は、リビングでぐったりしていた。
「暑いね~、お兄ちゃん」
「暑いな、麻衣」
「八月だもんね」
「八月だもんな」
「オーガストだもんね」
「オーガストだもんな」
「麻衣ちゃん、すごく可愛いよね」
「……ぐー」
「寝ないでよっ!」
 すぱーん!
 麻衣はスリッパで達哉の頭をはたいた。
「麻衣、スリッパで殴るのはどうかと思うぞ」
「大丈夫。だって、まだ履いてないから」
「そういう問題じゃないんだが」
「……はいてないから」
「……何?」



 ……。



「それにしても暑いね~。どうしてなんだろうね~」
「そりゃ、エアコンがぶっ壊れたからだろうな~」
 いつもなら静かな音で活動中のエアコン様は、今日は無音だった。性能がアップしたわ
けではなく、寿命を迎えたらしい。
「別にさ、麻衣は出かけてたっていいんだぞ。電気屋の相手は俺がするから」
 わざわざこんなに暑い家にいる必要は無い。故障したエアコンの修理、もしくは交換し
なければいけないかもしれないが、その調査のために電気屋が来てくれることになってい
るのだ。
「お姉ちゃんはお仕事。フィーナさんとミアちゃんもお仕事。だから、この家のことはわ
たしたちがやらなくちゃいけないんだよ」
「いや、だから」
「お兄ちゃんは、わたしと一緒はいやなの?」
「え?」
「お兄ちゃんがいやって言うなら、わたしは……」
「そそそ、そんなことないって! 麻衣と一緒でいやなことなんてあるもんか」
「お兄ちゃん……」
「麻衣……」
「お兄ちゃんがしたいって言うなら、わたしは……」
 すぱーん!
 達哉は新聞紙で麻衣の頭を叩いた。
「いたーい。ひどいよお兄ちゃんっ!」
「大丈夫。まだ読んでないから」
「関係ないし」



 ……。……。



「そういえばさ、風鈴ってなかった?」
「風鈴か……、ちょっと探してみるか」
 達哉と麻衣は風鈴を探しに家の中を行ったり来たりしたが、見つからなかった。
「ますます暑くなったね……」
「しょうがないよ。麻衣のせいだし」
「はっきり言われた!」



 ……。…………。



「そうだ。扇風機はあったよな、確か」
「そうだよね。でも、みんなの部屋にエアコン付いてるから、扇風機ってどこにしまった
のか全然覚えてないよ?」
「……困った妹だな」
「覚えてないお兄ちゃんには言われたくないよ!」



 ……。……。……。



「なあ、麻衣。お風呂に入ってきたらどうだ。さっぱりするぞ」
「う、うん。でも、お兄ちゃんに悪いよ」
「俺なら気にするな。麻衣が入ってから入るから」
「……お願いだから、わたしが出てから入ってね」
「気にするなって言っただろ?」
「気にするよ!」



 ……。……。



「お兄ちゃん、お風呂あいたよー」
「おう。あ、今そこにカキ氷作っておいたから、よかったら食べてくれ」
「わあ、ありがとうお兄ちゃん♪」
「実は、冷凍庫にあった麻衣のアイス食べちゃったんだけど」
「うわあん、お兄ちゃんのばかー」



 ……。



「はあっはあっ、買って来たぞ、麻衣のお気に入りのアイス」
「ありがとう、お兄ちゃん。あのね、お兄ちゃんが出かけている間に電気屋さんが来てくれ
て、エアコン直ったよ」
「そっか、これでやっと人並みの生活が送れるな」
「あ、そろそろはかないと」
「何を?」



おわり



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