2009/08/04

(ぷちSS)「16日目 お昼寝をしよう」(舞阪 美咲)



 八月になって、数日が過ぎた。夏休みに入ってから毎日部活に遊びに大忙しだったのが
響いたのか、今日はとてつもなく眠い。
 なんとか部活を終えた後は、昼飯を食べる前にひと眠りしようと横になった。
「雄一~、お昼だよ?」
「後にしてくれ……」
「そんなこと言っても、お昼は待ってくれないよ?」
「いいんだ、美咲が待っててくれればさ……」
「え……」
 そこで、俺の意識は途絶えた。



 目が覚めたら、空は青色から茜色に変わっていた。
「……あれ、そっか、寝ちまったんだっけ」
 身体を起こすと、節々がパキパキと音を立てた。
「おはよう、雄一♪」
 美咲がタオルを渡してくれた。冷やされていたタオルで顔を拭くと、眠気が一気に吹き
飛んでいった。
「ありがとな。ところで、俺、何時間ぐらい寝てたんだ?」
「うーんとね、四時間ぐらいかな。もう全然起きないから、たくさんいたずらしちゃった
けど」
 ……何?
「……えっと、何をしたんでしょうか。美咲さん」
「えへへへ」
 にこにこだった。
「ねえ雄一、お腹すいてるでしょ? 今日は夕飯食べて帰ろうよ」
「あ、ああ、いいけど」
「やったあ♪ それじゃあ、お姉ちゃんに電話するね」



「あのね、お姉ちゃん。今日、わたし帰りが遅くなるから。……うん、大丈夫だよ。雄一
が全部奢ってくれるって☆」



 誰がいつそんなことを言った?
「いいよね、雄一。四時間も待たせて、待っててくれる女の子なんて、そうそういないん
だよ?」
 ぐ、それを言われるとツライ。
「わかったよ。ただし、ひとつだけ条件がある」
「なあに?」
 首を傾げると、美咲のポニーテールが揺れた。
「夕飯は、1000円以内に抑えてくれ」
「うん、いいよ♪」
 ほっ、よかった。随分聞き分けがいいな。
「その代わり、デザートは食べ放題って事で」
「えー?」
「条件は、ひとつだけなんでしょ」
 ……ああ、もうっ!
「わかったよ。太らないように気をつけろよ」
「えへへ。運動するから大丈夫っ♪」
 俺は財布の中身を確認しながら、こっそりと溜息をついた。



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