2009/08/05
(ぷちSS)「17日目 雨のち晴れ、時々美咲」(舞阪 美咲)
梅雨明け宣言が出た次の日。さっそく雨が降った。
「まったく、天気予報なんてあてにならないなあ」
と、最初はそれでも気楽な気分だったが、部活が終わる頃にはものすごい勢いになって
いた。
「こりゃすごいな……。傘なんて役に立ちそうにないけど、どうする、美咲」
「とりあえず、ごはんにしようよ。お腹が空いては戦もできないし」
戦なんてしないけどな。誰と戦うんだよ。雨か?
「雄一が戦うって言うなら、わたしは応援するよ?」
「いや、遠慮しておく。……べ、別に逃げたわけじゃないんだからねっ?」
なぜかツンデレ化していた。
昼ごはんを騒々しく食べた。が、雨はよりいっそう騒々しくなっている。
「ねえ雄一。散歩に行こうよ♪」
散歩? お前はこの雨が見えていないのか。
「何言ってるの。わたしの視力はね、雄一の着替えがいつでも見えるぐらいにすごいんだ
から」
それ、もう視力の領域じゃないよね。
「ほらほら行くよ」
という美咲についていく。美咲はうれしそうに歩いていくが、その行き先は校舎の中だ。
「あ、見てよ雄一。窓がすごいよ」
美咲が指差す先には窓があった。雨がものすごい勢いで流れていく。
「確かにすごいな」
「なんだか、水族館の中にいるみたいだね♪」
……それはどうだろうな。洗車機の中みたいと言ったら怒られそうだが。
校舎の中を歩く。夏休み中なので、あまり生徒がいないのには慣れているが、それでも
この雨の中、美咲とふたりで校舎の中を歩いていると、なんとも不思議な気分だ。
「ねえ、雄一。普段歩いてる校舎も、こうやって大雨の中だと不思議な気分だね。なんだ
か別世界っていうか」
どうやら美咲も同じようなことを考えていたらしい。
「でもね、雄一が一緒だから、どこでも楽しいな☆」
特別なことはしていないんだけどな。ま、俺も美咲がいると、それだけで楽しいけどさ。
やがて、屋上に向かう階段にたどり着いた。
「せっかくだから、ちょっとだけ覗いてみるか?」
「うん!」
雨が降っているから、屋上には出られないだろうが、扉を開けて見るぐらいならいいだ
ろう。そう思っていたのだが、ちょうど雨が小止みになっているみたいで、雲の切れ間か
ら太陽の光が差し込んでいた。
「うわあ~……、偶然ってすごいね♪」
「ああ。さっきまであんなに雨が降っていたのにな……。これは美咲のおかげかな」
「え? わたし何もしていないよ」
「俺を散歩に誘ってくれただろ。だからこの景色が見られたわけだ」
「……えっへっへ~、美咲ちゃんすごい♪」
得意満面な顔で、ポニーテールを揺らす美咲。
ほんと、美咲といるとそれだけで楽しいんだよな。
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